現代詩 かたち
水にかたちがないように 心にかたちはない 水がどのようなかたちもとるように 心はどのような態勢もとる けれども 心は水ではない 心はかたちのないかたちをつくる
Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春
文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正
水にかたちがないように 心にかたちはない 水がどのようなかたちもとるように 心はどのような態勢もとる けれども 心は水ではない 心はかたちのないかたちをつくる
どんなにビルが建とうとも 心の支えになりはせぬ ただ一棟の城郭が われらの誇り 拠り所 遠い昔の建築が われらをしかと支えたる 宗教もなき建築の 威容を眺め 思い見る これぞ建築 権威そのもの この権威 ただに心のかたちなりけり 短歌 どれほどのビルも城には敵はぬはこれぞわれらの支えなりせば
春の海 ポッカリ浮かんだお月様 沖の向こうで シイラが跳ねる 豪華客船 光を散らし 真暗な海を 東へ東へ 海の水が 干上がらないのは 月が 海水引っ張るせい 海があるのは 月の引力 そのおかげ
ニーチェという教祖 ショーペンハウアーという貴族主義者 ミレーというペシミスト セザンヌという真新しさ ゴッホという超人
振り返るには早過ぎる 懐かしむには近過ぎる 恋愛は個人の狂気 戦争は人類の狂気 実験に明け暮れた 二十世紀 大河は流れる ここから果てなど見えはしない 流れて行こう どこまでも
わたしは、若いころに作った詩や歌を、よく、変えたりします。 次の短歌は、二十代に作ったものを五十代になって添削し、改作したもので、作った当初から、二重形容が気になっていたんですが、それを改めました。 夕日より思ひ焦がせる赤やあるなほ燃えんとす君の唇 宜しかったら、次の記事をご覧頂ければ、幸いです。... 続きをみる
月澄んで猫になりたい夜だった わたし自身は、月についてのどんな詩を書いてきたかと、振り返ってみたところ、上記の句と下記の詩が思い当たり、UPしてみました。 はじめて、自分の過去記事を、リブログしてみました、宜しかったら、ご覧ください。 詩は、秋の虫と月との取り合わせで、奇抜でも何でもないのですが、... 続きをみる
アートという隠れ蓑 純粋という当惑 天然という突破
理屈という辻褄合わせ 感情というこころ 笑いというご破算 直感という引き金
活躍という場 変化という無秩序 夢という萌し
作品という建築 恋愛という狂気 家というほだし
病気というきっかけ 縁という出会い 表裏というどちらか 美醜というどちらも 結婚という籍
人物という彫像 天才という目印 人という不可思議 神という極点
学歴という飾り 定義という論 正解という誤解 思考という限りなさ 観念という頼りなさ 理という組み合わせ ものそのものという確かさ 無常という非情さ 生というはかなさ
経営という背伸び 経済という循環 法律というせめぎ合い 真相という深層 無邪気という叡智
苦労という言い訳 心配という杞憂 疑心という暗がり 悪魔という連れ添い 鬼という砦
平和という共生 旋律という甘美 リズムという基底 不協和音という拷問 音楽という良心 仏という慈悲 神という恩寵 永遠という課題 刺激というレーゾンデートル
信という選択 喜びというせせらぎ 悲しみという海 とか 愛という統合 性という闇 普通という錯覚 というような言い方で、わたしは詩をつくっているが、これは、中国古典の易経を読んでいたときに、思いついたものである。 易経には、~は~なり。というような言い方が、よくされていて、ああ、言葉をうまく言い換... 続きをみる
金という物差し 戦争という実務 理念という足枷
コレルリの音楽は自省のために リストの音楽は歓衆のために ビゼーの音楽は女のために
甘い詩はいらない やに下がったような詩もいらない 着飾った詩もいらない きみ自身の本当のところを書いた詩はないか 本当のところを見つけられる人は希である それでもわたしは欲する きみ自身のギリギリの歌を
3.11 気の遠くなるような悲しみの日の夜 戦慄するほど見事な星空があった 夜空とは こんなにもわれわれに近い さまざまなことを語り掛けてくる 星々で 溢れ返っていたものか おお 果てしない哀しみを映す 鏡のごとき夜空よ うつくしい星空であるほど われわれはあの日を思い出さずにはいない
朝日は夜のかけらを散らし クマゼミははや鳴き始める ひまわりは空を見晴らし ミミズは石畳の上で干からびる 黄昏は愁いを含み カラスの跳ねて 夜 月は澄み渡る ※大学を出て、数年経ったときの詩です。少し改作しました。
こんな穏やかな春の日に 楡の梢はざわめく まぼろしは浮かんで消え その何処より来たのか明らかでない ※この詩は、わたしが詩を書こうと思い立った時に書いた、初詩です。
降りてくる 天から金の糸が降りてくる 粉雪の軌跡のように細いそれは のぼれそうでのぼれない 金色の糸が降りてくる 美は人に食いつくもの ※これも、大学を卒業した年に書いた短詩です。
いいあい いがみあい せめぎあい みつめあい むつみあい はなれあい まざりあい ならびあい
常緑樹の葉に月の光が落ち 露の滴りのような瑞々しい楽音となる わたしの心は泣いているのか ※同じく大学を卒業した年の短詩です。 UPすることにしました。
和歌によるミクロコスモスと言って良い、日本人や日本語ができるような人なら、誰でも名前なら知っている、藤原定家の編集者としての天才が如実に表わされた、見事な和歌集である。 こう言って置いて、後は、はずかしい話になってしまうのだが、じつは、わたしはこの和歌百首をすべて諳んずることができない。気の利いた... 続きをみる
夏というのに震える街 閉め切られたシャッター まばらな人影 ひっそりと人を窺う犬 夜中に鳴くカラス 屈託した女たちの ぬくもりを求める顔 今は 自己に沈潜するとき
あるテレビ番組のお陰で、俳句が流行りだそうである。良い傾向だとは思っているが、さて、その番組は見ていない。わたし自身、俳句制作者の一人として見ていると、どうかと思うくらい独断的だからである。指導者的であるのと、切れ味が良い批評と褒め方という以上のものは、得られないようである。 だが、振り返って思え... 続きをみる
野に寝そべり 黄色い花を見上げてみる 高い空へまっすぐに首を突き上げ 花は天になにごとかを告げているよう 大地の息吹きを背中に感じ 我に返ったようにわたしは思う 花は大地の言葉を天に届ける 明らかな徴ではないか われわれにはそれを表現する使命がある おお 名も知らぬ花
ボブ・ディランはブロー・イン・ザ・ウィンドの昔から 何も変わらない 古びていながら新味のある歌を 飽くことなく作り歌い続ける 日本の俳句芸術より狭いかも知れない フォークと少しばかり手足を伸ばしたロックとの ごくごく狭い境地で この男は自在に天地を駆ける この限局されたエリアはいかにも狭く不確かで... 続きをみる
宮沢賢治は、たとえ雑草と言えども、その名前をおろそかにせずに調べあげ、自分の詩の中に用いたと言われていて、実際その通りであったろうが、わたしには、賢治の情熱はない。 現代詩は、はっきりと抽象的であって良いと思っているからだが、もう一つの考えとして、「読み人知らず」の伝統を受け継ぎたいと思っているせ... 続きをみる
ボブ・ディランには 風がある つかんでもつかみ切れない風 われわれを連れ攫うでもない われわれをどこかに導くのでもない ただ 吹き抜ける風がある ああ 風が 絶え間なく吹いているのだよ この男の傍らには
我がもの顔にクルマが通る 日本の道をクルマが通る 一体何んの行列だい おちおち外も出歩けない 歩くだけでも一苦労 ああ 狭くも細い日本の小道を 我がもの顔にクルマが通る 口笛吹いて歩いたは 昔々のお伽の話 道は歩く人のためのもの 誰も聞かぬは承知だが それでも言うよ 歩く人こそ優先なれ
日本の現代詩のアンソロジーです。編者が選んだ現代詩人たちから、特に編者の心に響いた現代詩を各々四、五編ずつ取り上げ、一冊に仕上げた書物です。およそ、選ばれた詩人たちのもっとも出来の良い詩群を手軽に読むことができるように工夫された感があり、日本の現代詩に興味のある人には、とても優れたアンソロジーにな... 続きをみる
中也の年を過ぎ ゴッホの年を過ぎ モーパッサンの年を過ぎ 芭蕉の年が過ぎ去りぬ
詩は痩せた するどく痩せた 生き延びていることが不思議なくらいだ そのようにも われわれの心は痩せた ただ生きることだけを目指して 心はするどく痩せた 詩に復活の道はあるか 心を耕す鍬はあるのか いかにも 途方に暮れることだけが われわれに残された手段である
わたしはそれを地下鉄の電光掲示板で知りました それは瞬く間に消え まるで あなたからの短い伝言ででもあったかのように わたしの心をひどく騒がせました 入沢康夫さん あなたは現代詩を高みに引き上げた 難解な 模倣も追随も不可能な詩をあなたは残した わたしはすこしもあなたの良い読者ではなかった あどけ... 続きをみる
わたしたちの数には死を連想させる「4」がある あなたたちの数には性を連想させる「6」がある そして 次の偶数は二つながら 末広がりと無限を連想させる「8」である まるで永遠の下に 死と性が潜んでいるもののようだ
いいあい いがみあい せめぎあい かばいあい みつめあい
モンシロ蝶は日向を好む アゲハ蝶は日陰を好む モンシロかわいい アゲハはきれい モンシロ浮薄 アゲハは玲瓏 モンシロパタパタ アゲハはヒラリ そこへミツバチやって来た ここは見知らぬ人の庭
詩は生をつらぬく軸である 悲しみはかたちをもとめる声である 夏は去る 詩は真実の夢を紡ぐ器となりえるのだろうか
書かれなかったことで 永遠に安らっている 隙間 サント・ヴィクトワール山は あんなにじっくり見つめられて逃げ出したくはなかったろうか 空さえも 動かぬ色を 剥き出しにされ 四角い額の中に収められてしまった 事物はみるみる表皮をはがされ 自然は その驚くべき心を われわれに通わせる そのとき 唐突に... 続きをみる
生きのいい言葉はないか プロ野球投手の弓のように撓る身体からうなりをあげて 捕手のミットにズンと受け取められる 硬式ボールのような 手が赤く腫れ上がるくらいの手応えのある 確かな言葉を それは単なる 記号でも 観念でも プロテストでもなく 一人立ちした 言葉そのもの 象徴 いやそのような言葉ではな... 続きをみる
雨上がり 濁流は流れる たくましい遡上を続ける魚群を 孕みながら 鮮明な絵に描かれていたのは 風 知る人もない町の月明かり ああ 運命はわたしに諦念を贈ってくるのだろうか 優雅にも崩落していく女たちを 目の当たりにして
町の灯が星のかがやきを消してしまうように 光はじつに多くのものをかくした いつも控え目に片隅に埃をかぶって あまりに手近なあまりにあたりまえなもの 手垢に汚れた古本のように わざわざ取り出して見ることもないくらい 喜びは孕み 悲しみは生む アンナ・マグダレーナ・バッハのように 単純な生活の真実な感... 続きをみる
小高い岩山の細い山道を辿り 頂きに着くと わたしは宇宙に閉じ込められているのを発見した 樫の木の枝を握りながら 空がひたすら青くひたすら高いのがもどかしかった ああ 風が吹いているのだよ ケイ 茶褐色に削り取られた斜面は わたしの怯懦に適切なくぼみを与えてくれた どこにもいく場所がないから わたし... 続きをみる
運命であるか わたしを遠くへ連れ去ろうとするものは 過去を振り返ろうとは思わない わたしはあんまり出鱈目な道を歩いてきたから それが生きるに値する 物語であるなら 過去は自らを自らの言葉で語り始めるだろう 町の灯が雨に滲む バスは濡れている 病んだ心を抱えていることが わたしを前へ進ませるのか 空... 続きをみる
夜を阻むものはなにもない 眠りにつくごとに わたしはけだるい悪の夢を涵養した 無言の空間に輝く星は虚空の思想の罪業の深さを知っている 下半身を車につぶされた子猫が鳴く声の 遠い記憶のように 虚無は わたしの伴侶である
詩は刃に切られ 鮮血を 流し 生命を証す 詩は強風にあおられ 砕け 散り 吹きだまりをつくる 詩は火に焼かれ 熱く 燃え 骨となる 詩は土に埋もれ 腐り 死に 時を待つ
この夏の日盛りに君は忽焉として 逝った 心臓に大病を抱えた君の体は するどく痩せていた それでも君は仕事に熱心だった 誰のためというのでもなく 動かぬ足を引き擦ってでも 君は仕事先に出掛けた それは君の譲れぬ意地であったか 口は開き喉の奥の白い詰め物が見えた 君の死に顔は痛ましかった 略式の無宗教... 続きをみる
原野には男 ウサギはしなやかに叢を跳んだ 小石には蟻 眼界の果てには 遠くけぶる町 ここに 新しい線を引こう 黒く太々しい果てしない線を
ちりぢりの髪と 明るい少年の目をして あなたは詩を論じていました 光る言葉が見つかると あなたは貴重な昆虫をつかまえた子供のように うれしそうでした バイク事故に傷ついた 受難を思わせる あなたのでこぼこの額は けれどもどこか 人を安堵させる未完成の真実を 持っていました 松井さん クリスチャンだ... 続きをみる
喜びはモーツァルトを聴くこと 時にふと誰かが聴いている モーツァルトの音楽に耳を澄ますことは 無上のよろこびである なんという絶対の新しさ なんという絶対の自然さ どこまでもつきぬける自由 流れ出して止まない無限のやさしさ きよらかな泉のようによどみを知らず溢れでる抒情 そうして 異様なまでの多様... 続きをみる
バッハの音楽は神に捧げられている ベートーヴェンの音楽は人類に捧げられている モーツァルトの音楽は言葉に窮する ハイドンの音楽は美のために スカルラッティの音楽は遊戯のために メンデルスゾーンの音楽は趣味のために シューベルトの音楽は心情のために ショパンの音楽は集う人のために シューマンの音楽は... 続きをみる
ものがなしい夢から夢へと 人々はさまよう アスファルトは雨に濡れてさらに黒く バスはとまっている 外灯は葬式の灯明のようにきびしく光り ビルの谷間からのぞいた月に 青猫は手を合わせる 人は思いに耽る もの憂い語られることのない思いに
パっと扉が開いても ぼくは ボーっとしている 自然がどんどん入り込み 言葉がどんどん脱けて行く ああ 雨が降ったら傘をさすのだ ぼくはでく おお 紫陽花の花が咲いている ぼくは木偶
花のように世界を信じている 少女に出会いました 男は突風のように あっというまに少女を連れ攫いました 根っこさえ残らなかったのです
風にもまれ サクラは散り急ぐ 空を映した川に それは音符のように流れて行く 降りそそぐ花びらのその一つ一つの軽さを 川は 透明な裸体で受け止める 空は高く晴れ サクラは散り止まぬ その性急な凋落 遁走のアレグロ 死という最良の友を 連れて
わたしがいなくなったら お前はどう生きて行くつもりなんだろう 息子よ お前はどうしてかあさんに似て わたしに似なかったのだろう ああ 愚かにも心を閉ざしわたしの許を去って 行ってしまった息子よ 応えておくれ 息子よ わたしの生き方をお前はどう思うのか
明るい夕暮れ 少女がまぶしく笑いながら駆けていく 少年の日の 思い出は裂け 傷口は新しい血を流す 記憶はやわらかい肉体 わたしが人間であることを思い出させてくれる
言葉でいい 真心を書くのなら ありふれた言葉でいい 色はなくてもいい 精神を写すのなら 活字でいい 鍵は開いている
これがわたしの心臓です ずいぶんしなびて赤いのですが 白い洗濯物と一緒にぶら下がっている わたしの一つしかない心臓です 風の鳴る夜は、シャツといっしょに 夜の夢が一杯つまった 洋服ダンスの中に いれておきます 出かける前は忘れずに 洗濯物といっしょに干しておきます ある朝二羽のヒヨドリが来て啄んだ... 続きをみる
冬 曇天の空に 雨が降る 痩せた 形ばかりの人間が 草の枯れた川原にしゃがみこんでいる こわばった頬に雨があたる おお 冷たさに身を震わすのだ この人間の形をしたものは もっと冷たい空洞が 胸の奥に空いているというのに しばらくすれば体は冷えきり 風邪を引いてしまうだろう 彼は持っていたライターで... 続きをみる