文芸評論家の小林秀雄は座談の名手でもありました。文学者同士の対談だけではなく、戦後まもなく行われた物理学者湯川秀樹との対談もあります。理系文系の枠を越えた小林のじつに広い教養の幅を伺わせます。この書は、世界的な数学者岡潔と、多岐にわたる分野について、縦横に語り合った対談です。書中、「現在、知は、世... 続きをみる
2019年9月のブログ記事
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これは、わたしの言い方になるが、日本は、夏は東南アジア諸国並みに暑く、冬は北欧の冬並みに寒い。しかも、季節の変わり目は、日々の寒暖差は激しくなり、コンパクトに気温や気候は切り替わる。 季節ごとのメリハリは、とても強く、自然気象はダイナミックに動く。ただ、単に自然が厳しいというだけではなく、自然災害... 続きをみる
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「従軍慰安婦少女像」は、明らかな語義矛盾を侵している。婦人の「婦」と「少女」とが重なってしまっている。最初に作られた従軍慰安婦像は、史実通り婦人像だった。それが、いつの間にか、少女像に変わってしまったのだが、外向けの演出としてそうなったというところであろうか。 韓国では、また一頃、「偉大な普通の人... 続きをみる
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神経症は、一言で云えば、自分で自分の首を絞めるような病気に他ならない。けれども、そこから、人が立ち上がって見せるとき、どれだけ創造的な営為が為されるかは、非常なものがある。 自分で自分の首を絞めるとは、他の生物ではまったく見られない現象で、まことに人間的で、不具合な心の作用と言えるのだが、この神経... 続きをみる
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ロシア近代文学の祖、プーシキンの代表作です。この書には、ドストエフスキーの有名な講演筆録があります。「人類苦」を自ら担ったと標榜している余計者のインテリゲンチャ、オネーギンに一度は惹かれるが、そのインテリの上っ滑りな心を見抜いたターチヤナという迫害された女性にこそ、本来の人間の心があるというのです... 続きをみる
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西洋音楽に精通し、よくよく総覧した著者は、音楽には、よく言われるような「進歩」や「進化」などというものはなく、あるのは「メタモルフォーゼン<変容>」であると結論付けます。このことは音楽に限らず、芸術一般においても敷衍して言えることなのかも知れません。指揮者や音楽評論家としても活躍した著者の優れた音... 続きをみる
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今の政治家の良く口にすることばだが、わたしはこのことばを、まるで信用していない。われわれは、良い政治を期待しているのであって、民意による分かりやすいなどというのは、二の次のことだと思っている。 これは、文章でも同じことが言えるのだが、分かり易くて良い文章というのは、天才的な才能を持った作家によるも... 続きをみる
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ホロヴィッツという名ピアニストは、ミスタッチは演奏の本質ではないということばを残している。これは色々と考えてみる余地のあることばで、今の世の中では、正確ということが、いつの間にか、何に増しての権威として君臨してしまっている。 およそ、ライブ演奏において、一音も音を外さないということなど、希有なこと... 続きをみる
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フランスのモラリスト、アランの「幸福論」は名高い本だが、文庫本で三百ページほどに過ぎないこの本は、じつに見事な観察眼や思考がぎっしりと詰まった本で、わたしは、十数回ほど読んだのだが、まだ、読み足りないと思っている。 例を挙げると、もうこの時代に、列車の車窓の眺めが素晴らしいことと、しかもその眺めは... 続きをみる
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不平家 不平家とは、周囲と折り合いの付かない人のことではなく、自分自身と折り合いの付かない人のことである。 ○ 世の中を数字として抽象する統計値に対しては、人々はあんなに従順なのに、何故、抽象絵画や抽象芸術に対しては、あんなにも不平を漏らすのだろうか。偏に科学という権威によるものだろう... 続きをみる
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トルストイの目というのは極めて格別で、詩人と行動家の両面を併せ持った人の目である。「戦争と平和」を読むと、人間をテキパキと区分けしていく実際家と、人間そのものに迫ろうとする詩人とが、そのまま同居している様が見て取れる。 通常の人間では、この相反する傾向は同居できないものだが、トルストイという偉人に... 続きをみる
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人は自分の世界観に従って、世界を見るものである。では、世界とは、本当のところ、どのようなものであるか、それを知っている人間など誰もいない。 ○ 「現実を見よ」とか「現実を直視せよ」とか、よく言われることばであるが、人が見ているのは、そのほとんどが数字である。売り上げ、赤字黒字、統計値、... 続きをみる
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女は子どもを残す 男はことばを残す ○ 中秋やいずこへ消えし知識人浅くて軽い今のインテリ
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軽い話を一つ トランプ、習近平、プーチン、安倍晋三、金正恩、文在寅、マクロン、ジョンソン こう名前を並べてみると、何故か今注目を集めている各国のリーダーには、みんな名前に「ん」が入っている。 ユングがいたら、どう言うだろうか。一種のシンクロニシティであるとでも言うであろうか。
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モーツァルトの音楽を語る者は、誰でもその自然さを言うが、モーツァルトの自然は西洋の中でも、特筆されるべき自然である。 これは比喩によって語るしかないが、例えば、日が翳り、それとともに心がそこはかとない憂いを帯びる。または、落葉の降りしきる中を、少女が無心に踊っている。そのような無垢な情を伴った自然... 続きをみる
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狙い撃つごとくに野分首都圏へ 中枢の電気を断ちし野分かな あらためて電気の大事思い知る今の世なれば他人事ならじ
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民主主義政体下での論語 我々は小人として論語を読むべきである。少なくとも、君子面をして読むべきではない。 ○ 論語には、孔子がいつどこでどのように亡くなったかの記載がまるでない。これは、世界の大聖人の中では、珍しいことに属する。
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世の中をどう見るか。だいぶん以前、「世界認識の方法」という際どい題名の本を読んだ覚えがあるが、何が書かれてあったかさっぱり覚えていない。ただ、とてもつまらない本だったことだけは、よく覚えている。 世の中を一歩下がって見てみれば狂言芝居ならざるはなし
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現在の世界情勢は、まったく目が離せない。一体、どうなるのか予断をまったく許さないようである。 米中も日韓もまた香港もイギリスもまた世界は軋む
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理念とは、それを法令のように、人に押しつける筋合いのものではなく、常に自分の身の内にあって輻射熱のように、自分を限りなくたぎらせるものであることを、西郷ほど自ら実証した人はいないであろう。 理念は、理念という言葉を取る以前の分析のかなわぬ理想的な思想として、西郷に経験されていたであろう。「敬天愛人... 続きをみる