現代詩 耳
子どもは聴く
新聞が新聞受けにゴソッと入る音
ばあさんがおりんを鳴らす音
牛乳が吹きこぼれる音
クラスメイトのざわめき
先生のあくび
給食の食器がカチャカチャ鳴る音
放課後の高校生のおしゃべり
バスの運転手のしゃがれ声
枯葉がアスファルトの上をサラサラ転がっていく音
いたずらをした弟の泣き声
母さんの喉の奥の方の声
父さんががなる声
子どもは耳を澄ます
時計がチクタク時を刻む音に
天井で何かがゴソゴソ動く物音に
母さんの寝息に
家具がなにやらぶつぶつ呟く声に
そうして
寝静まったしずかな家に
かなたの死を思い
かなしみに襲われ
子どもは地球といっしょになって眠った
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