現代詩 黒点
小学校に上がる前
私は太陽が動かせるとひそかに信じていた
太陽はいつも私のあとを追って動く
それは誰にも教わらずに発見した私の大きな秘密だった
あるとき私は親しい友達に思い切ってその秘密を打ち明けた
私は友達にその場所に立って動かずにしっかりと太陽を見張っていてくれと頼み
保育園の小さな庭をぐるぐる回り出した
息せききって帰ってくると私は誇らしげに彼の顔を見た
しかし彼は当惑したような表情を浮かべて
「ちっとも動かないよ」と言った
私は驚いた
私は改めて友達の顔を見た
彼の顔にはありありと嘲笑の色が浮かんだ
私は慌てて彼にぼくと同じように太陽を見ながら駆けてくれと頼んだ
走りだすや否や彼は
「あ、太陽が動いている」と大声で叫んだ
私はすぐさま太陽を見上げた
太陽は動かなかった
いかにもそれは当たり前なことだった
幼い私の秘密が微塵に粉砕されただけだった
ただ そのときから私の心の片隅にぽっかりと小さな空洞が空いたようだった
後年 それは広がりを増し
私を脅かして止まなくなる
黒点のような空洞が
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