かなしみを如何にも深く掘りしとき底を流るる水の無きかは 果物屋春夏秋冬そろいたる 水の張りし田んぼ広がる通勤路
2019年5月のブログ記事
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ユングはフロイトとなにげない会話を交わしているとき、不意に、フロイトから「転移をどう思うか?」と聞かれ、ユングは「それは心理療法のアルファでありオメガです。」と応え、それに対しフロイトは「そうか、それなら、肝心なことは分かっているという訳だ。」と応じたという逸話が残っています。転移とは精神分析学の... 続きをみる
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いたましき事故のありけり凄惨な事件のありきこころ黙せり 路地のツツジ吠ゆるがごとく咲きにけり 油蝉死ぬると思いや飛び立ちぬ
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「百聞は一見に如かず」は古来からのことわざだが、現代は、メディアの非常な発達によって、誰でも一見が可能となった。 現代では、特に、撮影技術が発達したので、未知であったことが、どんどん衆目にさらされ、誰もが、その撮影された現場の目撃者となり得る時代となった。 つまり、一見ばかりが溢れるという時代にな... 続きをみる
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ドストエフスキーの大小説によく見られるのですが、極限にまで紛糾したと思わせる男女間の心理のせめぎ合いが、この短編小説では、まことにコンパクトに、けれども克明に描き出されます。自分でも知らぬ間に、新妻の心を、ぎりぎりにまで追い詰めてしまった金貸しを生業とする男は、自ら命を絶った主人公のおとなしい妻の... 続きをみる
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ことばは、その生きているところを捉えなくては、意味を成さないものである。したがって、生き物と同じように、それが生き生きとしているか、ほとんど死んだも同然であるかは、大事な点となる。 辞書などの言葉が、どうしてもこちらの胸に響いてこないのは、ほとんど言わば、休眠状態にさせられた言葉の集まりで、詩人に... 続きをみる
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最近、俳句がとても人気である。理由は色々であろうが、この寡黙すぎる文芸が、注目を集めているのは、慶賀すべきことである。形式をしっかりと持ち、季を愛でる文芸であることが大きな要因のように思われるが、俳句が詩歌に間違いないことは、こと改めて言う必要はないであろう。ただ、俳句を現在のような形で、残してお... 続きをみる
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ユング初期の傑作論考です。連想実験とは、被験者に「赤、水、死」などの刺激語を提示し、それから自由に連想する言葉を言ってもらうことで、その被験者の心の状態を調べるというものですが、ユングは、ここで、被験者が刺激語を与えられてから、回答するまでのわずかな時間に注目します。その時間を正確に測ることで、被... 続きをみる
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何故、パソコンや電子辞書等は両手で、入力しなければならないのか、わたしはずっと疑問でした。文字でも絵でも、我々は、利き手で書いたり描いたりする。もう、いい加減、パソコンや、電子辞書等のアルファベットの配列を変えましょう。 わたしがかんがえた、電子辞書等のキーボード上の片手入力用アルファベット等の並... 続きをみる
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ユングはごく若い頃から、超常現象といわれているものとは親しいものだったと、自伝の中で語っています。この書はユングの最晩年に書かれました。いわゆる「UFO」を深層心理学の立場から、しごく真面目に、しかも、学究的に考察した他に類例を見ない書物です。緒言には、占星学から論究された21世紀における世界観を... 続きをみる
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ユング心理学への入門書です。ユングとその弟子たちによる共著という体裁を採っています。ユングの心理学はイメージの心理学とも言われますが、多くの写真や図柄が豊富に採録され、ユング心理学への格好な導きの書物になっています。ユングの弟子たちには優秀な人材が多く、それぞれでも、盛んに優れた書物を著しています... 続きをみる
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誰が、最初に言い出した言葉か知らないが、わたしは、この新語を聞くたびに、つよい嫌悪感を覚える。 先に言って置きたいが、この言葉は、自分というものとしっかりと真面目に向き合って来なかった者に、言われ始めた言葉である。この言葉の語感を、よくよく確かめて欲しい。 自分と真剣に向き合い、自分自身と懸命に戦... 続きをみる
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かけまくもかしこき神のみ業にて母の命は長らえにけり ブランコやかすかに揺れる風のありぬ 用水路まっすぐ夏の空映し
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この小説は、「貧しき人々」の直後に書かれました。傑作かどうかは、判じかねるような作品ですが、ドストエフスキー自身は「『貧しき人々』より十倍優れた作品だ」と高言しています。ドストエフスキー自身の不思議な心の有り様が全面に溢れ出た作品と言って良く、複雑怪奇な心理の糸が、肉感性を持って、二重人格の主人公... 続きをみる
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当時のロシアの批評家ベリンスキーから絶賛された、ドストエフスキーの処女作です。著者の終生のモチーフの一つとなった虐げられた貧しい人々の秘められた美しい心情が、じつに見事に描かれます。この小説は、時間的にとても精緻に構成されていて、後年のドストエフスキーに見られる小説上の時間における革新性の萌芽を思... 続きをみる
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理念というものは、取り除けを許さない。言葉通りというのが、その本来の姿である。この理念を、日本史上、最初に行動に移した人間をかんがえてみると、信長に思い至ると思う。 信長という人間は、言葉数は少ないが、彼の下した命令は、絶対で、言葉通りであって、少しの取り除けも許さない。戦国の世にであったとしても... 続きをみる
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悲しみに押し潰された日々なれど壊れたものは壊れたかたち リンゴ囓りリンゴの味の確かなる 車窓には滝あらわれて消えにけり
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織田信長についての第一級史料とされる高名な歴史書の現代語訳です。この書に拠ると、信長は頭角を現すずっと以前から、天下を取る男に違いないと見巧者たちからは見られていたそうです。太田は、徹底した事実調査と私心を廃した目とで、具に、信長の為人と事跡を書いたと言います。この書は、信長の姿をまさしく浮き彫り... 続きをみる
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この短編小説は、いわゆるドストエフスキーらしい心理観察眼というものを、まるで感じさせないものです。作中、老婆は忽焉と息を引き取ります。天寿を全うした老婆の死は、誰にも悲しみを与えません。死ぬ直前の老婆は、しきりに自分の曾孫のコートの丈が少しばかり短いことを気にしていましたが、もう誰もそんなことを気... 続きをみる
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ベルクソンは言葉による解決を放棄してから、哲学を始めたと言っています。この書は、西洋哲学を総覧した著者が、なにゆえ哲学は、さまざまな学派に分かれなければならないのかという盲点をするどく突き、言葉による概念上の分析が、そのことに深く関わっている様をあぶり出していきます。言表不可能な直観を哲学の第一義... 続きをみる
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今は、あまり聞かれなくなったが、三英傑の信長、秀吉、家康の中で、誰が一番好きかというのは、昔よく聞かれた質問である。今でも何かの折に、こうしたことを言う人もいるかも知れない。ただ、この人物たちのことをよくよくかんがえてみれば、これは、単なる好き嫌いで片付けることができない人物たちであるのは、明瞭な... 続きをみる
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アランは二十才まで正式な音楽を聞いたことがなかったと言っています。この書は、そのアランが音楽についての造詣を深め、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを素材として、縦横に語った書物です。調についてのそれぞれの興味深い性格付けが為されていますが、アランは、調の性格付けがもっともむずかしい仕事だったと... 続きをみる
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いずれとも選びわけせぬ道なれど今朝よりわれは両道をとる モーツァルトいくたび聴けど新たなる戦慄すべき明るいこころ 今日よりは新時代なる令和ON