井筒の若年の頃のロシア近代文学についての論考です。驚くべきことに井筒は、取り上げられた文献をほとんどすべてロシア語の原著で読んでいます。プーシキンを先駆として、中には、あまり聞き慣れない作家の名前も出て来ます。ロシア近代文学を総覧し、井筒独自の解釈をして見せます。トルストイでは、その作品よりも人物... 続きをみる
ロシア文学のブログ記事
ロシア文学(ムラゴンブログ全体)-
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トランプ賭博に憑かれた男の人生を、活写して見せた小説です。なぜか、まるで不気味な人間のように出没するスペードの女王のカードに、男は気がかりな思いを持ち続けます。そうして、男の人生を賭けた、ここぞという勝負のクライマックスで、男を嘲笑うかのように、スペードの女王が出現し、賭けに大負けし、男は発狂しま... 続きをみる
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ロシア近代文学の祖、プーシキンの代表作です。この書には、ドストエフスキーの有名な講演筆録があります。「人類苦」を自ら担ったと標榜している余計者のインテリゲンチャ、オネーギンに一度は惹かれるが、そのインテリの上っ滑りな心を見抜いたターチヤナという迫害された女性にこそ、本来の人間の心があるというのです... 続きをみる
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ドストエフスキーの大小説によく見られるのですが、極限にまで紛糾したと思わせる男女間の心理のせめぎ合いが、この短編小説では、まことにコンパクトに、けれども克明に描き出されます。自分でも知らぬ間に、新妻の心を、ぎりぎりにまで追い詰めてしまった金貸しを生業とする男は、自ら命を絶った主人公のおとなしい妻の... 続きをみる
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この小説は、「貧しき人々」の直後に書かれました。傑作かどうかは、判じかねるような作品ですが、ドストエフスキー自身は「『貧しき人々』より十倍優れた作品だ」と高言しています。ドストエフスキー自身の不思議な心の有り様が全面に溢れ出た作品と言って良く、複雑怪奇な心理の糸が、肉感性を持って、二重人格の主人公... 続きをみる
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当時のロシアの批評家ベリンスキーから絶賛された、ドストエフスキーの処女作です。著者の終生のモチーフの一つとなった虐げられた貧しい人々の秘められた美しい心情が、じつに見事に描かれます。この小説は、時間的にとても精緻に構成されていて、後年のドストエフスキーに見られる小説上の時間における革新性の萌芽を思... 続きをみる
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この短編小説は、いわゆるドストエフスキーらしい心理観察眼というものを、まるで感じさせないものです。作中、老婆は忽焉と息を引き取ります。天寿を全うした老婆の死は、誰にも悲しみを与えません。死ぬ直前の老婆は、しきりに自分の曾孫のコートの丈が少しばかり短いことを気にしていましたが、もう誰もそんなことを気... 続きをみる
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ドストエフスキーの心理観察眼が縦横無尽に極限まで達したかと見える小説です。一人の未成年に語らせるという形式を取り、「悪霊」の直後に書かれ、「カラマーゾフの兄弟」への踏み台となったこの小説は、ドストエフスキーの最も得意な分野である複雑怪奇な心理世界を余すところなく書き尽くしているようです。小説の最後... 続きをみる
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ドストエフスキーは、自身を省みて「私はあらゆることにおいて限度を踏み越える人間だった」と述懐しています。ルーレットにはまると、靴下まで賭けてしまうという始末でした。この作品はドストエフスキーが口述したことを筆記し、即製されたものです。借金を返すためのやむを得ない事情からでしたが、賭博者というものは... 続きをみる
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小型爆弾と言ってよい本です。「罪と罰」の直前に書かれました。ドストエフスキーは人物としてはとても意地が悪く、付き合う人々を困らせずにはいない厄介な人である上に、至極純良な心を持っているというじつに複雑な心の持ち主でした。「ぼくは病んだ人間だ。意地の悪い人間だ。」という出だしで始まるこの小説は、その... 続きをみる
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大人物トルストイの幼年期の溌剌とした感受性を伝える得難い名著です。トルストイの父母は、トルストイがごく幼いころ、死に別れしましたが、貴族の家の中で、なに不自由なく育てられたと伝記は伝えています。ここには、幼年時代の少年らしさが、まことに飾り気なく、まっすぐな幸福感に満ちた感情で表現され、後年の苦悩... 続きをみる
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トルストイと比べると、ドストエフスキーの方がより現代的な小説家だというのが、一般的な見解となって久しいようですが、人物としては、トルストイの方が遙かに上回っているようです。ト翁という言葉はありますが、ドストエフスキーにはそうした言葉はありません。トルストイには、ドストエフスキーが書いたような芸術と... 続きをみる
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18才の時に描いた「ドストエフスキー」です。 19才にかけて文庫本で出ていたドストエフスキーの本は、ほとんどすべて読み、まるで、別世界に来たかのようでした。 【ほぼ、同時期にモーツァルトの「ジュピター」をエアチェックして、録音したものを聴いて驚愕し、ベームの「ドン・ジョバンニ」全曲版のレコードを、... 続きをみる
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トルストイと比べてドストエフスキーは常識外れと思われがちだが、作品の中で社会常識を踏み外さないのは、むしろドストエフスキーの方である。 晩年のトルストイの無政府主義的革命家とも思える言動は、社会の在り方を根底から引っ繰り返そうとする道徳的野人のそれである。しかも、これは晩年に限ったことではないので... 続きをみる
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世界文学の最高峰に位置する小説です。作者が最も成功した「罪と罰」を越えていると言っていいでしょう。「罪と罰」も含めた、ドストエフスキーの後期の大小説群は、単に、長いからというのではなく、コスミックと言えるほどの大きさを持っているのですが、この書はその中でも、最も円熟した作品です。「カラマーゾフの兄... 続きをみる
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ト翁とまで称される文豪トルストイの面目が躍如とする一大叙事小説です。トルストイは人間が想像しうるあらゆる才能を備えた人間と絶賛されました。「戦争と平和」はそのトルストイが、幼年時代から続けていた日記も止め、図書館が一つ建つくらいの膨大な文献を渉猟し、文字通り天才が心血を注いだ作品です。登場人物は五... 続きをみる
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ごくありふれた平凡な役人イワン・イリッチは、人生においても平凡な楽しみと平凡な苦労の連なりでしかない生活を送り、また、それに満足しきっていました。その彼が、ふとしたはずみの事故で、死に至る難病におかされます。トルストイは、この死に直面した平凡人を、時に残酷とさえ思えるような迫真の筆致で、正確無比に... 続きをみる
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作者は四年間、政治犯としてシベリアの監獄で獄中生活を送りました。その体験から書かれたのが本書です。前書きを除き、文句のつけようのない確固とした写実性に貫かれ、囚人たちの異様な、また最底辺の日常生活が克明に描き出されます。ダンテスク<ダンテ的な>とまで評された風呂場の情景。凄惨な三千にも及ぶ笞刑。労... 続きをみる
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題名だけで、すでに何かを暗示しているような思いを抱かせますが、作者はこの有名な題名については、一言もその由来を書きませんでした。主人公の頭脳明晰で鋭敏だが、貧乏な大学生ラスコーリニコフは、自ら考え出した自由思想に呑み込まれるようにして、金貸しの老婆を殺害します。作品の最後で主人公は自白するのですが... 続きをみる