Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

現代詩 ソーニャ

あの方のことをお訊ねですか 何をお話ししたらよいのでしょうか わたしには何もわかりませんが あ 何もわからないと言ってしまってはいけないんでしょうね きっと わたしはあの方のことをいつも思っております どうかあの方と呼ばせてください それはあの方は人を殺しました だから あの方と呼んではいけないんでしょうけど でも あの方の後ろにはいつも神様がおいでに なっておられます わたしにはそれが感じられ…

現代詩 四季2

虫が 腹に滲みて鳴く夜 薬を三粒飲んだ 夜風がそろそろと入り込む 久しぶりの夜の秋 友の電話はきれいな声をしていた もうすぐ牡蠣が食えるだろう 気の早い山国の楓は もう紅葉しているかもしれない 四季は 年を取らない幼馴染みのような顔をしている 腹の虫が鳴り止み 頭が少し冴えたとき 思想を潰したら 酸っぱい中身が出てきた

現代詩 四季

比喩ではなく 地表を癒していく大きなやわらかな手 春 犬が小川を泳いでいる 無限がそそり立つとき 人々はまなざしを上にあげる 夏 木陰には蟻の巣がある 時間は旋回し 銀河に軸が通される 秋 公園のベンチで思想が成熟する 無意識の底に沈んだ記憶 美しい人々の足音が聞こえる 冬 時おり木枯しが吹く