Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ ベートーヴェン「後期カルテットとピアノソナタ」

ベートーヴェンの後期の音楽は、わたしはとても、宗教的で西洋音楽としてはエキゾティックな感じを受ける。カルテットやピアノソナタなど特にそうである。


宗教的だと感じるのは、わたしだけではないと思うが、ベートーヴェンの場合は、ある特定の宗教を指向しない、いわば、自由な宗教感情にあふれている。ここが、バッハなどの教会音楽とは、明らかに違うところのように思える。Op101から特にその感じが強くなっているように思う。


エキゾティックと書いたが、当の東洋人のわれわれにとっては、それこそ精神的に正統と思える感覚である。


ベートーヴェンの耳が聞こえなかったことは、本当に大きな意味を持っていて、耳が聞こえなかったからこそ、驚くべき精神の内奥を表現し得たと考えた方が良かろう。障害を乗り越えた者の瞠目すべき成果である。言い換えれば、障害者だからこそ書けた音楽であると言える。


そして、精神の内奥を表現することが、なにゆえ、東洋的になるのか。わたしには分からないが、後期のベートーヴェンの音楽は、はっきりと西洋文化の直中にありながら、それを乗り越えた境地に達していると言えると思う。