「未成年」ドストエフスキー 岩波文庫
ドストエフスキーの心理観察眼が縦横無尽に極限まで達したかと見える小説です。一人の未成年に語らせるという形式を取り、「悪霊」の直後に書かれ、「カラマーゾフの兄弟」への踏み台となったこの小説は、ドストエフスキーの最も得意な分野である複雑怪奇な心理世界を余すところなく書き尽くしているようです。小説の最後に「現代の小説を書きたいと願う人間は、推察することです。そして、誤つことです。」という心理世界の極北に立つと思しき言葉が見えます。未成年は「未成年」という言葉に言い知れぬ屈辱と憎悪を抱いているものである。これは作者自身が誰よりもよく見抜いていた事柄でした。
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