「横しぐれ」丸谷才一 講談社学芸文庫
歌人種田山頭火を描いたフィクションです。わたしの好みからいくと丸谷の中でもっともよい小説ではないかと思われます。「横しぐれ」という一語を文学史的に繙いていって、旅先で偶然出会った山頭火に「なるほど、これで十分なわけですな」と言わせます。「横時雨」はこの一語で成立している「うた」で、古来から歌の師匠たちはこの言葉を和歌に使ってはならぬと教えてきたといいます。そうして、山頭火の流浪の人生を思い、禁忌に属するような言葉遊びが見られます。「横しぐれ」→「横しくれ」→「横死暮れ」と。漂流の歌人山頭火を丸谷流に描いて見せた傑作中編小説です。
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