エッセイ 小林秀雄「実朝」のこと
「無常という事」の連作の一つである「実朝」は、若い頃のわたしには、この連作の中で、もっとも難解で、また、もっとも暗く感じられた作品だった。
「無常という事」の連作の中では、「西行」が、その頃のわたしには、一番心に響き、もっとも、好きな章の一つだった。「西行」も「実朝」も、何回読み返したか知れないほど、熱心に、繰り返し読んだが、「実朝」は、ようやく、不惑を過ぎた辺りから、よく分かるようになったのを、覚えている。
小林の文章は、何回読み返しても、ついぞ、飽きるということがない。これは、小林秀雄という物書きの、どのような特性に拠るものなのか、色々と考えてみるのだが、よくは分からないままで、何回も読み返している次第である。
「考えるヒント2」などは、一体、何回読み返したことか。18才のときから読んでいるが、まだ、今の歳になっても、読み返したくなる。
それで、この「実朝」であるが、小林の作品の中では、珍しく、もう卒業しても良いかなと思えるところがある。それから、もう一つの名作「モオツァルト」も。
キーワードの一つは、「暗さ」かも知れないと、感じているところであるが。
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