Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「学問のススメ」福沢諭吉

あまりにも高名な本ですが、この書だけで、福澤の思想を代表させるには、少し無理があるようです。福澤の思想の本領が発揮されるのは、やはり「文明論之概略」や「福翁自伝」においてである、というのが撰者のかんがえです。「学問のススメ」で、福澤は、新時代の徳というものを列挙します。軽薄は鋭敏に、鈍感は重厚に、吝嗇は節倹にという具合に、短所は直ちに間髪を入れず、長所に転換し得るものだと考えますが、ここに不徳の極だけに偏して、徳に転換しないものが一つある。それが「怨恨」であると言います。怨恨は確かに、負の感情しか生み出さないもののようです。それで「富貴は怨の府にあらず。」と初めに述べられた論が補強されます。この書は、学問を修めて、「富貴」になることを眼目に書かれた書だと言っても、強ち的外れではないようです。