「郷愁の詩人 与謝蕪村」萩原朔太郎 岩波文庫
近代抒情詩の確立者、萩原朔太郎によって描かれた与謝蕪村です。俳人蕪村に、すでに近代に繋がる水々しいロマン的な抒情性を見出し、芭蕉が「漂泊の詩人」と呼ばれたのに対し、「炉辺の詩人」「郷愁の詩人」と名付け、その本質をあたたかいロマンの詩人として見出しました。「君あしたに去りぬ。ゆうべの心千々に何ぞ遙かなる。君を思うて岡の辺に行きつ遊ぶ。岡の辺なんぞかく悲しき。」紛れもなく蕪村の詩です。「愁ひつつ丘に登れば花茨」の句の屈託した抒情性に呼応しています。子規が、蕪村を写生主義的客観派の詩人とした定説を打ち破り、蕪村の真の理解へと導いたのは、朔太郎の天性の詩魂に他なりませんでした。
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