Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「マルテの手記」リルケ 新潮文庫

この「おすすめ本」に入れるかどうか迷う本ですが、やはり、取り上げましょう。リルケはドイツの詩人です。ロダンの秘書を務めたこともあります。リルケは、何よりもネガティブなもの、殊に夜をこよなく愛しました。「闇の詩人」と言ってもいいでしょう。この「マルテの手記」の毒は強烈です。リルケ自身が、マルテの心情に付き添うことは危険だと自分の愛読者に語っています。読み進むうちに、われわれ自身のうちの確かなものが次第に揺らぎ始め、やがて根元から浸食されていくのを感じます。読後も、なんとも言いようのない悪夢が続いているような心持ちになります。劇薬のような作用をする書物です。