Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 有事の時 <新型コロナウイルス>

今、世界は有事である。戦争による有事ではなくて、ウイルスによるそれだが、こうした有事の際には、各人の心の秘めた内面があぶり出されるように、出現するものである。


落ち着いて堂々としている人かと思ったら、途端に、不安極まりない言辞を吐き出したり、自分は、周りには踊らされる人間ではないと日頃から言っていても、マスクや紙用品を探すのに汲々としていたり、こうした有事のときこそチャンスだと、死の商人のように不届きな商売をしたり、そうではなくても、他の人は、どんな風に生活を送っているのだろうかとしきりと気になったりと、様々な態度をみせる人間の有り様が見て取れるところである。


アランというモラリストは苦境に立ったときこそ、みずから微笑むということを教えたのだが。「前向き」とか「上機嫌」と言い、皆上の空だったことが、これで暴露されてしまうことだろう。


わたし自身、こうした有事のときにどういう態度をとるべきか、そんなことは知らない。だが、こんなとき、他の人は、どういう態度でいるのかと気になって仕方がないという人の顔は、しっかりと見えているということだけは、言いたいと思う。