「アイヌの昔話」萱野茂 平凡社ライブラリー
著者は、アイヌ民族出身の政治家でもあった、アイヌの昔話の収集家でした。本書はアイヌの人々によって口承されてきた昔話を著者が日本語に訳したものです。この昔話の中には、殺されたことで、「もう、悪事を重ねなくても良くなった」と自分を殺害した者に礼を言う悪神の話や我が子を焼いて「おいしい、おいしい」と言って食う母の話など、戦慄するような話柄があります。また、「わたしは」という一人称で始まる話が多いのもアイヌの昔話の独特さです。日本の近隣民族の昔話には、現在のわれわれ日本人が忘れ果ててしまったような原始日本民族の純潔な心情を保持しているような趣があります。大自然に抱かれた神々と自在に交流する人々の昔話です。
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