「平家物語」梶原正昭・山下宏明校注 岩波文庫
軍記物の一大叙事物語です。平氏の絶頂から没落までを具に描き、つはものたちの躍動感に満ちた言行を簡潔な和漢混交文で活写します。木曽義仲の最期などは、真に武人らしい最期で、芭蕉が惚れ込んだものです。時代の意匠であった仏教思想は、手玉に取られているようで少しも抹香臭さを感じさせません。男らしい人間臭さが、紙背から滲み出てくるような雄渾な闊達さです。平家の人々は、誰はばかることなく、よく笑いよく泣きます。御着背長<おんきせなが>が翻り、たくましい馬が駆け抜けます。目を奪われるような鮮やかで純真な武人たち、人々の姿です。歴史の重量感をしかと感じられる物語です。
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