Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「正法眼蔵随問記」懐奘 岩波文庫

道元禅師の弟子懐奘が、師の言葉を採録した書です。懐奘は道元よりも年長なのですが、真摯に師の言葉を書きとり、その為人に肉薄します。この書には、現代のわれわれの心をじかに打つものがあります。道元の開いた永平寺の修行は有名ですが、その修行は実は普通の人間が、修行の心構えを持ち、それなりに我慢すれば、誰でもできる仕組みになっています。マニュアル人間と言いますが、永平寺での修行は一分ほどの隙もありません。一日すべてすることが決まっているのです。八百年の長きに渡り、営々とそれが続いています。道元禅師は普通の人間とはどういうものであるかをよく知っていました。その道元が「正法眼蔵」の真骨頂を分かり易く述べたと言われるのが本書ですが、当の「正法眼蔵」に優るとも劣らない書物と言っていいでしょう。読めば、何ものかが得られる書物です。現代人にとっての指南書だとも言えそうです。