Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

ツァラトゥストラと原水爆 <詩人の千里眼>

ツァラトゥストラはゾロアスター(拝火教の祖)のドイツ語読みである。ニーチェは原水爆という史上もっとも熱い火を手に入れるに至った現代を予見していただろうか。詩人の千里眼とはそういうものであろうとも思うが。


ベルクソンは、最後の著作で、「人類はまだ自分たちの運命は、自分たち次第だということをよく分かっていない。」と言った、原水爆発明の以前のことだが、手に余る火を手に入れて、どう扱って良いのか、持ちあぐねているのが現代人の状況だということは、間違いがないようである。


核融合反応は、核分裂反応と違って、有害放射線を出さないことが知られているが、まだ核分裂反応のエネルギーを利用しないで、核融合反応を起こす技術は確立されていない。レーザーによる研究は盛んなようだが。だが、核融合反応にしても、あまりにも熱い火であることには変わりはない。


日本が唯一の原爆の被爆国であることは、その点、象徴的であるし、そんな目に遭っていながら核シェルターの普及率が世界でも最も低い国の一つであることは、何を示唆しているか。国際的に見れば、アホウドリ並の無防備さである。因みに数字でというと、スイスは110%以上、アメリカ、ロシアは80%ほど、日本は0.02%である。


自然界で、もっとも熱い火は恒星であるが、地球にもっとも身近な恒星である太陽が、核分裂と核融合を繰り返して燃えているのも、よく知られたことである。だが、なぜあんなに長期間そうした反応が可能なのかは、今のところ謎のままである。


太陽が天照大神であり、最高神であることは日本の神道の常識である。とすると、原水爆は天照大神の化身という説も成り立つところであるか。


われわれ現代人にとって、原水爆が味方になるか敵になるかどうか知らないが、少なくとも、日本人にとっては、終末論を実現しかねない大いなる敵とは感じられていないようである。わたしには、核シェルターを普及させないこの日本人の態度の方が、興味深く感じられるところである。