Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 中村汀女の句 <女性俳人>

稲妻のゆたかなる夜も寝べきころ 汀女


わたしは、汀女の句集は、読んだことがないが、虚子や大岡信の本の中で紹介されていて、この句を知った。


なんでも、ある女性俳人が、「雷」の題で、句を詠もうとすると、この汀女の句が浮かび上がって来て、どうにもならないと俳句の師匠に、その苦衷を訴えたそうである。


わたしもそうなので、雷のことを考えたり、また、雷が鳴ったりすると、まず、汀女のこの句が脳裏に浮かぶ。


良い句だなあと、思うと同時に、これだけ人の頭に張り付いて離れない句も、ちょっと、ないだろうとかんがえる。


他の句から想像すると、汀女はかなり奔放な、近代版の和泉式部というような女性だったように感じ、ちょっと、怖い女性だなあと思い、句集を読んでいないのである。


こんな句もある。


残し置きし子ほどに遠く蟬の声 汀女


いや、こういった女性は、遠くから、好奇心を持って眺めていた方が、安全なような気がしてならない。近づくと、間違いなくヤケドするだろうと思う。