Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 日本の気候について <再考>

日本は温暖な気候の国であるとは、誰が言い始めたことなのだろうか。


日本は、温暖な国どころではない。確かな文献によっても、夏は、日本人全体が夏バテするほど暑く、冬は、夏のままの格好で居たら、凍え死ぬほど寒い。


日本で、イスラーム文化のラマダーンに当たる、断食月が無いというのも、日本は、夏の暑さで自然と、食が細くなるので、人為的にそうした工夫をする必要がないということである。


ここで、イスラームを持ち出したというのも、日本人は、禁忌された事柄をイスラーム並みに、厳格に守る民族だからである。例えば、牛である。平安期以降、人々が食したという記述がない。これは、当時、伝来した救済思想の仏教が殺生を嫌うという考えに拠るところが大きかったのだが、平安期以降、日本人が初めて公に食したのは、明治天皇が嚆矢である。これは大英断だったのであって、何ゆえに明治神宮なる庭園が造られたのか、頷けるところなのである。


それはともかく、気候であるが、はっきりと日本は自然が厳しく、その四季の移り変わりは目まぐるしく、気温差のメリハリは、一年を通じて、先進国の中でも際立って大きい。


日本は、四季の自然の恵みが豊かなのであって、自然が、穏やかな国ではないので、そこが、いつも取り違えられるところのような気がしてならない。


そうして、季を愛でることにかけては、日本人は、世界のどの国よりも頭抜けている。旬という観念があるのは、日本だけだそうである。


花見やお月見という風習を取り上げても、自然と、礼儀正しく、触れ合おうとする態度は、欧米もしくは東南アジア諸国の国々とは、まるで違っているといって良い。日本の自然は、厳しかったせいで、日本人を甘やかさなかったとでも、言って良いくらいなものがあると思われる。前論との繰り返しになるが、災害の多さも与って力が大きい。


こうした国である。日本人が自国の気候について、何故に「温暖」であると言い張って、取り違えをするのであるかは、未だに、一つの謎であるが。