Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 蒸気機関考 <発見というもの>

ワットという人によって、蒸気機関が考案されたのは、周知の事実だが、この蒸気をエネルギーに変換するというアイデアは、じつに見事な発見だったので、わたしは、もっとも大仰なことばで賞賛しても、仕切れないほどの、人類史上かつてないと言って良い、ニュートンの重力発見に比肩する、発見だったと、思っている。


この蒸気機関の仕組みは、まず、蒸気機関車として具現化された。それから、程なくして、石炭火力は空気をよごすということで、電車にとって代わるのだが、その電気を作る仕組みには、ほとんどどの発電所にも蒸気機関が採用されているので、けっして一時の役割で終わるものでは、なかった。


火力、原子力、地熱など、現在の枢要な発電設備には、どれにも、エネルギーを蒸気に変換し、タービンで回して電気を作る仕組みが、採用されている。また、これがもっとも効率が良く、安定して電気を供給できる仕組み、である。


ソーラーや風力などの再生可能エネルギーと言われる発電方法は、どうしても電力供給に安定性を欠き、今のところ、巨大な電力を大量に蓄電できるような仕組みは、ない。


それにしても、水が沸騰するなどということは、あまりにも当たり前な出来事に属するものであるのに、そこから、効率の良い巨大なエネルギーを生み出すことに成功したのは、じつに、目を見張るべきものである。


人類史に刻まれるようなアイデアは、発明というよりも、発見と言った方が、適している。


次に、来たるべき発見は、どのようなものであるか。


ヒントは、やはり、水という不思議な物質に由来するものか、あるいは、それこそ空気のようなまったく当たり前に存在するものの中に、求められるような気がして、ならないのだが。