エッセイ ランキング <ベートーヴェンの音楽>
あるクラシック音楽番組で、ベートーヴェンの曲のランキングを、人気投票形式でやっていた。日本人は、相撲の番付のような伝統のある国のせいか、ランキングがともかく好きな国民である。
Excelには、さまざまな関数機能があるが、これは、その人の好きな関数や嫌いな関数に分かれるようである。わたしは、いずれも日本人だったが、Excelのランク関数が、とても好きだという女性と仕事をしたことがある。
かく言う、わたしも、にほんブログ村で「おすすめ本」のブログのランキングに入っているので、人のことをとやかく言えた義理ではないのだが、わたしの場合は、ランク付けは上位5位ほどまでが、気掛かりで、後は、どうでも宜しいと思っているところがある。
前置きが長くなった。ベートーヴェンの曲は、どうも、人々をランキングやある種の選択に誘うようにできている、ちょっと不思議な曲だなと思うのである。
吉田秀和は、ベートーヴェンに触れた章で、ベートーヴェンから五曲を選ぶとしたらと書いて、それぞれの曲を掲げているが、これは、ランキングではないにしても、選択であることは間違いなかろう。ベートーヴェンの曲は、無論、傑作揃いなのだが、その中でも、君は一体どれを選ぶのかと、聴者に迫ってくるような音楽であるという性質を持っているようだ。
たとえば、バッハやモーツァルトの音楽では、そういうことを、敢えてしようとする人はいないし、たとえしたとしても、ベートーヴェンほどの重要性を持ち得ないようである。
自己主張やポピュラー性の強い音楽とは、そういうものなのであろう。もう一つ言えば、全集も、ベートーヴェンの音楽は、その駄作もふくめて重要な意味を持ち得るが、バッハやモーツァルトの音楽は、それほどの重要性は持たない。何も必要ではないと言っているのではない。ベートーヴェンのときのような音楽的重要性を持たないということである。
こう考えていくと、ベートーヴェンという音楽家は、いかにも、不思議極まる芸術家に見えてくる。
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