Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ きれぎれ草 110 <自分、自己実現、古典>

学問とは、ものに行く道であって、自分に向かう道ではない


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自分を対象にして、道を踏み謬らないのは、ソクラテスやゲーテやルソーやユング、明恵や芭蕉のような選ばれた天才たちであって、われわれ凡人は、よろしく自分以外の何ものかに、向かうべきである


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自己実現ということばが、本家のユングを離れて、なんとかの一つ覚えのように、現代のどの組織や個人の間でも、これでもかというくらいに、使い回されている現代である


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ユングの著作を読んでみれば、いや、ユング派の河合隼雄さんの本を読んでも、一目瞭然なのだが、自己実現は、それをしようとするよりも、むしろ、そのことは避けて通った方が、より安逸で充足した人生が送れるようなものである


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日本で、ユングの言う意味での、自己実現した人物の筆頭となるような人を探せば、明恵や日蓮の生涯が、もっともそれに相応しいくらいなものである


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凡人と天才との違い
他人をそのままの姿で、映せるかどうかである
凡人の鏡は、どうしても歪む
天才も凡人扱いにするか、それとも、まったく手の届かないところに置いてしまうか、どちらかである


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ただ、今は天才という言葉はひどく下落してしまい、神ということばが流行りである
人間を神扱いしなければならない人は、凡人たる証拠に他ならないのだが


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一首
他人とは自分の鏡に他ならず映りが良いは古典に如かず