エッセイ 東京考 <東京は仕事をする所>
わたしは、学生時代の四年間、東京に住んでいたのだが、その住んでいた寮は、昼間の幽霊でも、出るかというくらい、古びた、水道の水も、そのまま飲むのはどうかというほどの寮だった。
その代わり、立地はすこぶる良くて、地下鉄茗荷谷の駅から歩いて5分の、隣には億ションが建っているという寮であった。
今は、もうすっかり、建て替えられて、名前も変えられ、別の建物になってしまっているが、学生寮であることはそのままである。
それで、わたしは、今、地元の名古屋に住んでいるのだが、東京に戻りたいという思いは、まるでない。
というのも、あるとき、六本木の109という建物が見える有名な交差点に立ったとき、その人々の流れの生々しさに、ここは、仕事にだけ来るべきところだ、決して、住むべき所ではない、原宿しかり、新宿しかり、池袋しかりと、強く思ったものだった。
名古屋から、東京に出たての時は、「東京は動いている」という思いでいっぱいだったが、今は、その逆上せていた自分が、どうも、逆上せていただけだったと、気付いたのである。
東京に、住んでいる方には、申し訳なく思うが、「東京は住むべき所ではない」というのが、わたしの持論である。
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