戦後を代表する総理大臣吉田茂は、第一級の政治家だったと言っていいでしょう。この書はその吉田と交友のあった今が、慎重に公平な視点で描いた等身大の吉田茂像です。著者の今は親友の小林秀雄から吉田のことを菊池寛と似ていないかと聞かれたとき、「うまそうな葉巻を吸っていたから、一本くれと言ったら、くれたよ。そ... 続きをみる
菊池寛のブログ記事
菊池寛(ムラゴンブログ全体)-
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菊池寛が、同郷の偉人弘法大師の「十住心論」を学んで書いた書物です。菊池は、真言宗弘法大師の特に「即身成仏」の思想に注目します。これは、人間に非常な勇気を与える思想ではないかと感服します。菊池は、「弘法大師の小説も戯曲も書けなかった。しかし書こうと努めたおかげで、弘法大師のことをいろいろ知ることがで... 続きをみる
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菊池寛には「屋上の狂人」といい、知的障害者を扱った作品が多いのですが、この「義民甚兵衛」もそのひとつで、また菊池寛の中で最もよい作品ではないかと思われます。意地の悪い、悪知恵に長けた母親や兄弟から、知的障害の甚兵衛は苛められるのですが、甚兵衛の間抜けな正直さが、知らぬ間にあっと驚くような復讐を母親... 続きをみる
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儒教の五徳でいけば、仁義礼知信と末端に位置する徳である。信は、それほど身近な普遍的な徳目であって、例えば、日常生活で、バスや電車に乗るとして、そのバスの運転手、電車の運転士を信頼していなければ、本当には乗れないはずなので、飛行機や船などは、なおさらそうであろう。スーパーで買う食べ物等、どれを取って... 続きをみる
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「罪と罰」のラスコーリニコフは、自分で抱いた自由思想を全人格で実践した男である。そこには、何の妥協もないのであって、誰にも、それを止める力はなかった。そうして、凶行を遂げた後に、良心の呵責が容赦なく襲いかかっても、自由を追い求める彼の悪魔的な頑強な人格は、それによって、崩壊することはないのである。... 続きをみる
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菊池寛の残した唯一の自伝ですが、題名の通り、自分の子どもの頃のしかも「万引き」をしていた自分の悪さを中心に書いた破格の半自叙伝です。作者の良いところは、まるでと言っていいくらい出て来ません。写実的に描かれた子どもの頃の悪事は、作者の鋭敏な心情をずいぶん傷付けたに違いないのですが、読者には「万引き」... 続きをみる
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菊池寛は偉人です。何がどのように偉かったか説明に困るような偉人です。文藝春秋という雑誌を創刊し、大衆小説を数多く書いた、実業家と作家を兼ねた人と言えばそれまでなのですが、それだけではどうしても菊池寛という人を掴んだことになりません。およそ、作家と言われる人はその当の人間より、書かれた文章の方が立派... 続きをみる