Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ シェイクスピアとドストエフスキー <試論>

世界文学でも、重要極まりない、この二人の人物を並べて、上げてしまったが、一つの試論ということで、ご覧頂ければ、有難い限りです。


詩人としては、シェイクスピアの方が秀で、人間観においては、ドストエフスキーが優っていると、わたしは見ている。


シェイクスピアの比喩表現の卓越さは、どの詩人を持ってきても、群を抜いていると思う。


ダンテの比喩表現の深刻克明なのに比して、シェイクスピアのそれは、平明で適切、さらに奥深い味わいを持っている点において、他の追随を、許さない。詩人としての力量を、比喩表現の巧みさで、論えるならば、シェイクスピアは世界文学における第一人者として、その座を誰にも明け渡さない詩人である。そして、その人間観は、その詩人的視力から、じかに、導き出されたものだと、かんがえるのである。


もう一人の重要人物、ドストエフスキーに焦点を当ててかんがえて見ると、比喩表現に関しては、じつは、あまり大した詩人とは言えない。比喩の仕方は、ぶっきら棒で、ありきたりであり、工夫というものがほとんどない、と、さえ言い得る。その代わり、それを補ってあまりある、人間についての、誰にも凌駕できないような、桁外れの視力を持っている。


シェイクスピアの人間像が、言わば、人間の上半身まではよく書けていると、言い得るならば、ドストエフスキーは人間の全身像を、また、その揺らぐ足元までをも、書いていると、言って良いのではないか。


シェイクスピアに書けなかった人間として、神聖さを持った人間がある。このDivineという性質は、「罪と罰」や「カラマーゾフの兄弟」に集中して、見られるものである。


<続く>