「外套」ゴーゴリ
ロシア近代文学の出発点となったと目されている小説です。平々凡々たるある気の弱い小役人の男の話ですが、このさしたる才能も持ち合わせていない男は、自分の筆耕の仕事に、誇りと喜びさえ抱いています。その男が、逼塞する経済であるにも関わらず、新しい外套を購入しようという野心を抱きます。外套は首尾良く新調されるのですが、無残にも、愚劣な官僚組織の中で、行方不明となってしまいます。男は、上司に不手際な抗議をしますが、上司からの理不尽な叱責に耐え切れず、病に伏せり息絶えます。小説の最後、男は亡霊となって、上司に夢のような復讐を遂げます。ドストエフスキーに、われわれロシア近代文学の子たちは、みんなゴーゴリの「外套」から出て来たと言わせた傑作短編小説です。
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