Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 日本史雑感 <元寇とその後>

日本が、史上はじめて世界と衝突したのは、元寇の時だったと、わたしはかんがえている。


あの元寇のとき、高麗や蒙古の軍団が、どれほど残酷なことをやって去って行ったかは、今でも、五島列島やその近辺に行けば、語り継がれているほどである。以前のブログでも、触れたことがあるから、ここでは繰り返さない。


そのときの、言わば、人を人とも思わない残忍極まりない所業は、次第次第に、語り継がれて日本中に広がっていき、まるで、無理やりカンフル剤を打たれた人のように、それを語り継いでいった人々の人心を、強く揺さぶり、毒素のように作用せずにはいなかったろうと想像するのである。


元寇から、数百年経った後で、あの応仁の乱が始まり、日本は乱れに乱れる。天皇の権威権力は失墜し、幕府は名だけのものとなる。そのときの流行歌。「あな楽や、人を人とも思はねば、人もわれを人とは思はぬ。」


この時代、いわば、日本で初めて出現した実存的な「無道時代」と言ってよかろうと思う。


わたしが不思議に思うのは、この無道時代からそのまま乱世の戦国時代に突入し、戦いに戦いを重ねて、次第次第に、天下統一へ導かれるのは、もちろん誰でも知っている事柄であるが、抑も、何故にまた、戦闘に戦闘を重ねながらも、まるで、この世に大道でもあるかのごとく、天下統一へと向かい、平和な江戸時代、それも、ほぼ三百年も続く時代を迎えるのか。思えば、じつに不思議な道程ではなかろうか。


このことは、どうすれば得心の行くような説明がつくことなのか。わたしは、今まで心底から、納得できるような説は、聞いたことがないのである。言わば、そうした事実だけが知られているという事柄で、わたし自身は、本当を言えば、よく分からないままなのである。