Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 言葉によって <法律のことば>

わたしは、法律の条文が苦手である。と言うより、自分のような文学に馴染んだ頭からすると、とても、不思議な文章に見える。人がことばを操るのではなく、言葉が人を制御するという、まったく逆用の言葉の使い方だからである。


ことばが人を縛るというので、思い当たるもっとも古い言葉は、十戒であろうか。ただ、これは外国生まれの外国育ちの戒律という感じがして、わたしのような異邦に生まれた日本人には、どうしてもピンと来ないものがある。


プラトンは、「人間に馬が作れないように、法律は作れない」という言葉を残しているが、この詩人的素質をふんだんに持った哲人のことばの方が、十戒などより、わたしには、ピッタリと来るのが実感である。


けれども、忘れてはならないのは、現在の日本は法治国家であって、日本国憲法は人間間の紛争の最後の拠り所として、厳然と君臨している。今、これに異を唱えようとしても、バカを見るだけというような様相である。ただ、詩人のことばが言葉に過ぎないように、憲法も、また、言葉に過ぎないということを、人は忘れがちである。


憲法の骨格は、人々の常識に由来するものであるのは、論を俟たない。ただ、現代は、常識を壊すことばかりに専念している時代ではあるが。