Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 日本の自然

これは、わたしの言い方になるが、日本は、夏は東南アジア諸国並みに暑く、冬は北欧の冬並みに寒い。しかも、季節の変わり目は、日々の寒暖差は激しくなり、コンパクトに気温や気候は切り替わる。


季節ごとのメリハリは、とても強く、自然気象はダイナミックに動く。ただ、単に自然が厳しいというだけではなく、自然災害は、他の国と比べてみても、圧倒的に多い。地震、台風、津波、火山噴火、大雨、豪雪等々。


こうした国であるにも関わらず、日本人は季を愛でることにかけては、他国の追随を許さない。自然に寄り添ってものを考えるというのは、日本人にとっては、あまりにも当たり前な思考法と言っていいほどである。


岡潔という、世界的に有名な日本人の数学者がいたが、この人が発表した解析の数式は、いままでの冬の荒涼とした数式を、春の季が漂う数式に変えてみようと発想されたものであったそうで、それが、世界的な評価を受けた。日本人でなければ、書けなかった数式であろうと、数学の門外漢ながら、思ったものであった。


小林秀雄の「本居宣長」も、はっきりと「春」の季を感じさせる論考であり、「モオツァルト・無常という事」の冬の季とは違っていることは、これらの書物を読んだ人は、頷かれることと思う。


今は、秋である。豊かな自然の恵みが与えられる季節であるとともに、また、自然災害も際立って多くなる季節でもある。


一つの疑問、何故、日本人は欧米諸国の人々のように、自然と対峙し、対抗するような思想を抱かなかったのか。自然は、確かに偉大である。それは、西洋人の思う神に近いが、また、決して神の座に居坐るものでもない。日本人の不思議な自然観である。