Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ きれぎれ草 104 <ある逆説>

「人間には、欲がありますから。」というようなことばを、会話の途中に、挟まずには居られない人は、往々にして、欲まみれな人間である場合が、ほとんどである。


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「流れというものがありますから。」と、そのある流れから、自由であるような口振りで、喋る人は、どっぷりとその流れの中に、浸かっているものである。


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他の、誰か彼かを、批判して止まない人がいるものだが、その人自身をよく観察してみるのも、良いことである。その人は、自分のもっとも至らないところを、そのまま相手のせいにして、批判しているということに、良くものが見える人は、気が付くものである。このように、人を批判して止まない人の心の状態を、心理学では投影の機制という。


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批判批評の矢というものは、いずれ自分の元に返ってくるものである。「それは、他人のこと」と信じて止まないような人は、特定の男とある種の女性だけである。


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仏像のような、おだやかな目は、じつに多くのものが見えているものである。怒ったようにとげとげしい、もしくは、相手を探るような目は、物事のある部分しか見えていない目である。


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自分というものは、けっして直接に自分を見ることはできないものである。むりに、見ようとすれば、その時点で誤り、ときには、みずからをあやめてしまう。


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答えよりも、問いをさがすこと。しっかりとした問いは、そのまま答えである。たどり着くまでの苦労などは、単なる苦労話に過ぎない。