Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 日本はすこしも狭くない <雑感>

「日本は狭い」とは、よく言われる言葉だが、わたしは日本は少しも狭くないというのが、日本に住む者の実感としてある。「狭い日本」とは、単に、世界地図を見たときの感想をいった言葉に過ぎないのではないかと思っている。


急峻な山々がそびえ立っているために、天候は日本海側と太平洋側とはまるで違うし、単一民族であるにも関わらず、地域間同士の横の連携はまことに薄く、そのために、行政をはじめ、至るところで縦割りである。


芭蕉は「隣はなにをする人ぞ」と歌ったが、もう芭蕉の時代から、お隣さんとの付き合いは、ごく薄いのであるが、そうかと思うと、すこし田舎に行くと、隣近所の付き合いはとても濃い。


また、地域差というものが、これほどある国もめずらしい。特産物のバラエティに富んでいることは、世界に冠たるものではないかとさえ思う。それなのに、世界では、技術立国として知られている国なのである。


昔、名古屋から京都の天橋立まで、自動車で連れて行ってもらったことがあるが、その道中の果てしないと思われるような長さには、困惑したものである。迂闊にも、わたしには、そのとき、世界地図上の日本しか頭になかったのである。


いや、日本は狭いどころか、じつに色々なものがぎっしりと詰まっている国で、よくよく見てみないと、その本領が分からない国である。