ある外国人作家が、志賀直哉の作品を読み、「彼の作品は、みんなエッセイではないか。」と言ったという話がある。 ブログ村では、エッセイは、小説の中に分類にされているが、さて。 欧米人の思考の通例で、あるものを区分けするというのがある。 いわゆる、分類学というものであるが、例えば、烏賊やタコが悪魔の生き... 続きをみる
小説のブログ記事
小説(ムラゴンブログ全体)-
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小説は善意のウソ ○ 人間はギリギリが好きな生き物 ○ 音楽 剥き出しの芸術 今は、録音技術が発達しているから、そんなに感じないが。音楽は、そこに、演奏家が居なければ、とても成立し得ない芸術であった。これほど、時空を共にする、いわば運命共同体のような芸術は、他に、演劇があるのみ... 続きをみる
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トランプ賭博に憑かれた男の人生を、活写して見せた小説です。なぜか、まるで不気味な人間のように出没するスペードの女王のカードに、男は気がかりな思いを持ち続けます。そうして、男の人生を賭けた、ここぞという勝負のクライマックスで、男を嘲笑うかのように、スペードの女王が出現し、賭けに大負けし、男は発狂しま... 続きをみる
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トルストイの目というのは極めて格別で、詩人と行動家の両面を併せ持った人の目である。「戦争と平和」を読むと、人間をテキパキと区分けしていく実際家と、人間そのものに迫ろうとする詩人とが、そのまま同居している様が見て取れる。 通常の人間では、この相反する傾向は同居できないものだが、トルストイという偉人に... 続きをみる
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モーパッサンの小説の登場人物は、どの人物を取り上げてみても、人間の血と体温を感じさせ、その人の顔や姿さえも、はっきりと分かるように書かれたもので、これは著者の想像力が、いかに並外れて力強く血肉を伴ったものであるかを思わせるものです。この小説は、ある娼家のなんでもないような出来事を取り扱ったものです... 続きをみる
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この小説は、やはり小説家である師匠のフローベルから絶賛されたと伝えられています。人の良い愛国心に溢れたフランス人の娼婦が、戦争状態にあるドイツ人の将校に辱められ、フランスの貴族からも指弾を受けるという話柄で、物語の最後に、ある男の口ずさむフランス国歌が、象徴的でさえあるとフローベルは誉めるのですが... 続きをみる
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悪漢小説です。「ベラミ」は「きれいなおじさん」という意味です。軍役を終えたが、さして取り柄のないベラミと名付けられた主人公は、友人に薦められて、新聞記者となります。その後、自分の美貌を武器に次々と女を踏み台にして出世していきます。出世のためなら、自分に尽くしてくれた女を巧みに裏切ることも、殴ること... 続きをみる
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法華経を持ち出すまでもなく、ウソには様々な効用がある。芸術の中でも、小説という大きなウソがある。ドストエフスキーの小説が、どれほどの迫真力とリアリティを持ったものであろうと、それらの小説群がまったくの絵空事であるのは明々白々のことである。 フロイトだったと記憶しているが、科学の弱点は、真理に対して... 続きをみる
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この小説のモデルは、アウシュヴィッツの強制収容所で、自ら、ある男の身代わりになって、獄死したコルベ神父だとされています。一般社会では、愚図で愚鈍な男という烙印を押されていたこの神父は、遠藤周作の心を強く揺さぶり、この小説の得難いモチーフとなりました。まるで、敬虔なカトリック作家遠藤周作と人を笑わせ... 続きをみる
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丸谷才一は先年亡くなりましたが、現代小説家として、通好みの小説ファンが多かった人です。「小説家としては学問があり過ぎ、学者としては想像力があり過ぎる」と言われたほど博識な小説家でした。この小説はまだ女を知らない青年と可憐な生娘との初体験がテーマです。うぶ同士の若い男女の交渉はよく書かれていて、微笑... 続きをみる
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ドイルは本格的な歴史小説も書きましたが、シャーロック・ホームズの名があまりにも大きかったために、その小説はあまり注目されることはありませんでした。晩年には、神秘思想にも凝ったりしています。この作品は、ホームズシリーズの中でももっとも長い、またもっとも良い作品でしょう。小説全体を覆う一種独特の怪奇的... 続きをみる
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鏡花のグロテスクな怪奇趣味が横溢した書物です。主人公の旅の男はある山の家で、美しい女人と出会います。その女人こそ魔界の主で、自分の色香に迷った男どもを次々と醜いけものに変えてしまいます。きよらかな心を持った主人公だけが、無事人間のまま山を下り、不思議だった経験を人々に語ります。鏡花の他の作品では、... 続きをみる
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鴎外の文章は剛直そのものです。まったく当たり前な文章法に従って書かれているにも関わらず、鴎外の強い個性と文章本来の持っている力強さがにじみ出てきます。この作品は、ある人物のひょんな通癖が巡りめぐって、一族もろともの滅亡にまで発展してしまうという皮肉な悲劇ですが、筆者は、ここになんの説明も加えていま... 続きをみる
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サリンジャーはユダヤ人の作家です。日本の禅文化の影響を色濃く受けた人で、巻頭言には白隠の「両手で打って鳴る音を片手で聞け」という禅の公案が掲げられています。サリンジャーは初めから、日本の禅文化に興味を持っていたわけではなく、アメリカで起こった、金持ちの家に生まれ、どこから見ても幸福そうだった青年の... 続きをみる
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当時、見掛けだけ大げさでロマンチックな小説が持てはやされていましたが、スタンダールはそうした小説を憎み、一見平板にさえ見えるような文章を用い、本当のロマンチシズム溢れる小説を書くことに成功しました。スタンダールは、この小説を自分の膝に親類の少女を座らせて、その少女に語るように口述筆記をさせて書いた... 続きをみる
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親和力は化学用語です。ある物質と他のある物質とが互いに強く引き付け合う化学反応を指します。ゲーテはここで、どうしても互いに引き合って止まない人間同士の恋に例えました。一人は妻のある中年の男、もう一人は、その男を思慕する若い女性です。道ならぬ恋に悩む女性は、ついに絶食して自ら命を絶ちます。男も同じ方... 続きをみる
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ロシア戦役で最高司令官を務めた乃木希典を描きます。乃木は当時の論文で、「無能論」が書かれるほど戦術家としては取り柄を持たない人でしたが、松陰と同じ師によって教育されたその精神力は巨魁と言ってもいいものでした。有名な二〇三高地への攻撃命令は、まるで明日の馬の準備でもするような口振りで伝えられます。病... 続きをみる
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幾重にも織り巡らされた物語の筋が、最高潮を迎えて、一挙に一点に集中し、破局します。リアリズム作家バルザックの苦り切った顔が見えるようです。バルザックは、自分のすべての作品群を、ダンテが自分の「神曲」をコメディーと呼んだのにあやかり、「人間喜劇」と名付けました。この「幻滅」は、その「人間喜劇」の中で... 続きをみる
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主人公のバルタザールは、科学の「絶対」に憑かれた男です。妻は足の悪い身体障害者ですが、夫のバルタザールのことを愛しきっています。バルタザールは時折、家族のことを顧みはしますが、科学の実験のために、家のほとんどの財産を蕩尽してしまいます。その間に妻は亡くなってしまいますが、見かねた娘がバルタザールに... 続きをみる
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ウジェニーの家は葡萄作りで収入を得ていて、非常な金持ちです。これはウジェニーの父が、本物の守銭奴であるためで、父は、家族全員、召使いにも爪に火をともすような暮らしを強制させます。これほど頑丈な守銭奴の性格の持ち主は、どの小説にも見られないと言っていいでしょう。妻がどうなろうと娘のウジェニーがどうな... 続きをみる
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バルザックは51才で亡くなりましたが、創作意欲は実に逞しく膨大な量の小説を後世に残しました。この「谷間の百合」はそのバルザックの小説の中でも、「ゴリオ爺さん」と並んで、最高傑作と目されるものです。舞踏会で出会った美しいモルソフ伯爵夫人に恋をしてしまった純情な青年フェリックスは、夢がかない夫人とつき... 続きをみる
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モーパッサンの作品中、もっとも有名な小説です。ある平凡な貴族の娘の平凡な一生が、鮮やかに活写されます。ここにも、著者は特に優れた人物は一人も描いていません。モーパッサンの作品では、自身を題材にしたいくつかの小説を例外として、著者自身ほとんど顔を出すことはありません。この小説の最後で、ある平凡な女の... 続きをみる
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カトリック作家、遠藤周作の代表作です。日本におけるキリスト教・カトリック受容の歴史において欠かすことができない人物です。ルオーの描く、常に弱き者貧しき者の隣に寄り添うキリストの絵に衝撃を受け、長崎で出会った人々に踏まれ続けた踏み絵のイエス像を見て、この作品は形をとりました。小説の最後、責め苦に遭っ... 続きをみる
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数多いバルザックの作品の中でも、選り抜きの最高傑作です。バルザックは、スタンダールと同時代人のフランスの小説家ですが、スタンダールとはまるで作風が違います。充分に前置きを固めておいて、大団円まで持っていきます。前置きがかなり長いために、中途で読むことを諦めてしまう読者も少なくないほどです。けれども... 続きをみる
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飄然としていながら、独特の風格をもった現代作家、井伏鱒二の代表作です。原爆が投下されてから約二十年後に、この本は完成しました。日本最初の原爆小説ですが、二十年という年月がいかにこの悲惨な現実を描くことが難しかったかを物語っています。そうして、これほどの悲惨な戦争の悲劇を取り扱いながらも、飄々とした... 続きをみる
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作者は四年間、政治犯としてシベリアの監獄で獄中生活を送りました。その体験から書かれたのが本書です。前書きを除き、文句のつけようのない確固とした写実性に貫かれ、囚人たちの異様な、また最底辺の日常生活が克明に描き出されます。ダンテスク<ダンテ的な>とまで評された風呂場の情景。凄惨な三千にも及ぶ笞刑。労... 続きをみる
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バルザックでは、金貨が活躍する。バルザック自身がありとあらゆる事業に手を出しては失敗し、金に振り回され続けた作家だった。 「ウジェニー・グランデ」で、ウジェニーの父の守銭奴のグランデが、娘に譲ったはずの金貨をいとおしそうにじっと見つめる場面には、凄惨な迫力がある。 「絶対の探求」で、バルタザールの... 続きをみる
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太宰治の代表作。太宰の人生を色濃く反映した自伝的な小説とされています。他人の前では面白おかしくおどけてみせるばかりで、本当の自分を誰にもさらけ出すことのできない男。仕事についてのやる気を問われてもどうとも返答しない男。徹底的に、世の中の余計者であり続けた男の人生を描き、海外でも多くの人々の共感を呼... 続きをみる