Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

太宰治「人間失格」 新潮文庫<近代の余計者>

太宰治の代表作。太宰の人生を色濃く反映した自伝的な小説とされています。他人の前では面白おかしくおどけてみせるばかりで、本当の自分を誰にもさらけ出すことのできない男。仕事についてのやる気を問われてもどうとも返答しない男。徹底的に、世の中の余計者であり続けた男の人生を描き、海外でも多くの人々の共感を呼んだ名作です。太宰の文章は、観念的なことを語るときも、肉感的な味わいを持ち、読む者にささやきかけるような文体が特徴です。太宰は女性にはよくもて、文学もよくし、また風流を愛する余計者であった点で、近代版の不幸な「在原業平」と言って良いかもしれません。