カトリックに改心したヴェルレーヌの宗教的な秘儀というべきものを伝える名詩編です。訳者の河上徹太郎は小林秀雄の生涯を通した友人でした。河上はこの書を読み、カトリックに入信する決断をしたと言っています。詩中、ヴェルレーヌは、はげしく神を探し求めます。けれども、その彼の道は、神こそが、それを切り開いてき... 続きをみる
フランス文学のブログ記事
フランス文学(ムラゴンブログ全体)-
-
モーパッサンの小説の登場人物は、どの人物を取り上げてみても、人間の血と体温を感じさせ、その人の顔や姿さえも、はっきりと分かるように書かれたもので、これは著者の想像力が、いかに並外れて力強く血肉を伴ったものであるかを思わせるものです。この小説は、ある娼家のなんでもないような出来事を取り扱ったものです... 続きをみる
-
この小説は、やはり小説家である師匠のフローベルから絶賛されたと伝えられています。人の良い愛国心に溢れたフランス人の娼婦が、戦争状態にあるドイツ人の将校に辱められ、フランスの貴族からも指弾を受けるという話柄で、物語の最後に、ある男の口ずさむフランス国歌が、象徴的でさえあるとフローベルは誉めるのですが... 続きをみる
-
悪漢小説です。「ベラミ」は「きれいなおじさん」という意味です。軍役を終えたが、さして取り柄のないベラミと名付けられた主人公は、友人に薦められて、新聞記者となります。その後、自分の美貌を武器に次々と女を踏み台にして出世していきます。出世のためなら、自分に尽くしてくれた女を巧みに裏切ることも、殴ること... 続きをみる
-
ヴァレリーは、ベルクソンやアランと並ぶ同時代の哲学者で、詩人でもあり批評家でもありました。明晰な純粋意識を徹底して実験して見せた『テスト氏』は、数学的な意識研究報告書といっていいものです。『ドガ・ダンス・デッサン』では親交のあった画家ドガの言葉をモチーフに、批評文のあらゆる可能性が試され、深遠な哲... 続きをみる
-
頭の働きは悪く、無教養だが大金持ちの町人ジュールダンは、貴族になりたくてしようがありません。貴族の真似をして、じつにさまざまな習い事に手を出します。ついには、娘も貴族でなければ、嫁にやらないと言い出しますが、ジュールダンは、貴族のしたたかさに手もなくやられてしまいます。観客はその有り様に抱腹絶倒し... 続きをみる
-
タルチュフは偽善者の代名詞となった劇中人物です。敬虔な宗教家を装い、金満家のオルゴン氏を夢中にさせてしまいます。他の登場人物たちは、もうすでにタルチュフの正体は、ほとんど見抜いているのですが、オルゴン氏だけは宗教的な高揚さえ、タルチュフに感じています。タルチュフはオルゴン氏一人に対しては、思いのま... 続きをみる
-
ルパンシリーズの中でも最も力の入った良い作品でしょう。作者のルブランは、最初モーパッサンのような作家を目指していましたが、作者の頭の中に、自ら創造した怪盗ルパンのイメージがどうしようもなくこびりついて離れず、また、ルパンシリーズの小説が多大な評判をとったこともあって、怪盗ルパンを書き続けました。作... 続きをみる
-
豊かな色彩感覚に溢れた美しい小説です。自分が非常な美貌の持ち主であることに自分でも気がつかないような純粋な心情を持った女性と、寡黙だがたくましいアイスランドの美青年の漁夫との恋愛悲劇です。ロチは、さまざまな経緯をへて二人を結びつけますが、物語の最後で、美青年の漁夫をまるで海の女神が嫉妬したかのよう... 続きをみる
-
一般的に、あまり顔と名が知られた人ではありませんが、 フランス象徴派に区分けされている詩人、「アルチュール・ランボー」の若い頃の写真からの模写です。ランボーには写真がわずかしか残っていません。 わたしの敬愛する小林秀雄の影響もあり、学生時代、目まいのするような難解な,、けれどもところどころ強く輝く... 続きをみる
-
-
世慣れない純真一方の青年アルセストは、偽善だらけの社交界に強く反発し、激しく憎みますが、その社交界を体現したような男心を手玉に取るコケットなセリメーヌ未亡人に恋をしてしまいます。この皮肉な出来事が、劇に何とも言えないおかしみを生じさせますが、ついに、おかしみだけに終止することはありません。アルセス... 続きをみる
-
モーパッサンの作品中、もっとも有名な小説です。ある平凡な貴族の娘の平凡な一生が、鮮やかに活写されます。ここにも、著者は特に優れた人物は一人も描いていません。モーパッサンの作品では、自身を題材にしたいくつかの小説を例外として、著者自身ほとんど顔を出すことはありません。この小説の最後で、ある平凡な女の... 続きをみる
-
数多いバルザックの作品の中でも、選り抜きの最高傑作です。バルザックは、スタンダールと同時代人のフランスの小説家ですが、スタンダールとはまるで作風が違います。充分に前置きを固めておいて、大団円まで持っていきます。前置きがかなり長いために、中途で読むことを諦めてしまう読者も少なくないほどです。けれども... 続きをみる
-
この小説については、すでに小林秀雄の名評があります。「破壊にのみ適した諸運動が、突如として合成され、一挙にして形を得た。」評自体が、すでに抽象語による詩になっている感があります。ダイヤモンド・カットのように切り出された恋愛心理の動きは、明晰に屈折しながら、また彫りの深い陰影に富み、作者ラディゲが二... 続きをみる
-
一見、無造作と思える筆致で書かれていながら、ロマンチシズムの香気が濃厚な作品です。作中、主人公のジュリアンは、ある女性が昔の恋人の話を楽しげにするのを聞いていて、じりじりします。その女性は、ジュリアンと今会って話しているからこそ、昔の楽しい思い出に耽っているのですが、ジュリアンは、「それでは、あな... 続きをみる