Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 料理で感動すること

じぶんが心の底から、感動したものというと、本とCDということになって、映画や食べ物などで、心から感動したものというものが、まったくといって良いほどない。絵画などは、わたしにとっては、その中間に当たるだろうか。


わたしの家は、事実、貧しかったのだが、7人兄弟中5人は大学へ行かせる経済力はあったから、中間の下層というところだったろうか。今では、この中間層という言葉も、ほとんど死語になったようだが。


ともかく、貧乏舌である。小さい頃に外食したという経験は、ほとんどない。高校生の時、アルバイトで勤めていたきしめん屋が、賄いで出してくれる、天ぷらきしめんがうまいと思った程度である。


それで、良く、思い出の食事というのを、テレビでやっているが、じしん振り返って見て、さて、自分にとって、一番の思い出となる食事というものとなると、これが、ほとんどないのである。


もう一度、あの料理を食べたくて仕方がないという料理を、わたしは知らない。わたしには、お袋の味というものがない。じつは、わたしが作る料理の方が、お袋が作る料理より、数倍うまいのである。わたしのお袋は、家事全般が、まるで、ダメと言ってよい人なのである。


こういうわたしなのだが、じつは、味には、いたくうるさいのである。貧乏舌であることは、重々自認しているのだが、このわたしの舌を、こころの底からうならせるほどの味わいのある料理を、提供してくれた店は、かつてなかったのである。


一食、数十万するような料理は、もちろん、食べたことはないが、それでも料理の決め手は、値段などではないと思っている。店のブランド価値や価格のなどというものに、わたしは、あまり、信を置かない。それに、そんなに高いお金を出してまで、食道楽をしようとは、思わない。


だが、もう、わたしも良い歳である。このまま、心の底から感動できる料理は、知らないままでいるような気がする。