Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「ファウスト」ゲーテ

この劇詩は、選ばれた少数の人々のためにしか書かなかったとゲーテは言っています。老博士ファウストはあらゆる学問を究めた後、言い知れぬ虚しさを味わいます。悪魔メフィストが現れ、世の活動に満足を見出すまでという契約によって、再び若さと健康を手にし、世の中のあらゆる活動にわが身を委ねます。ゲーテが五十年の歳月を費やし、死ぬ直前に完成したこの劇詩は、一筋縄で読める書物ではありません。第一部は別で、これは誰でも読めますが、第二部に入り象徴的な筆致が濃厚になってくると、何が言いたいのかさっぱり訳が分からないという人が多いのです。そうして、最終行の「永遠に女性的なるものはわれらを引き上ぐ」に至るまで、読みこなすにはゲーテが言う通りの精神的な選良でなければならないでしょう。ユングは「ファウスト」に真の錬金術の過程を見ています。世界最高峰に位置する古典中の古典です。