エッセイ 民意による分かりやすい政治
今の政治家の良く口にすることばだが、わたしはこのことばを、まるで信用していない。われわれは、良い政治を期待しているのであって、民意による分かりやすいなどというのは、二の次のことだと思っている。
これは、文章でも同じことが言えるのだが、分かり易くて良い文章というのは、天才的な才能を持った作家によるものであって、民意による分かりやすくて良い政治となると、ほとんどそんな政治を成し遂げた政治家が、果たして居ただろうかというほどのものである。
たとえば、吉田茂が英断を下したサンフランシスコ講和条約にしても、民意による分かりやすさで言えば、当時の東大の総長さえ反対したものであって、吉田は、この総長を曲学阿世の徒と罵って、アメリカに乗り込んだのであるが、その総長は後になってから、私の言っていたことは間違っていたと言い出すのである。一国の総理大臣が、もし、そんな為体であったら、現在の日本はどうであったろうかと思ってしまうほどのものである。
現在、SNSによる民意が世論を大きく動かしている感がある。しっかりした政治家は、そうした声に振り回されることなく、良い政治を行って欲しいものである。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。