Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

志賀直哉「小僧の神様」 新潮文庫

文庫本で数十ページほどの短編小説ですが、この作品の題名から「小説の神様」とまで呼ばれた日本を代表する近代の小説家です。磨き上げられた正確な美しい日本語を用い、完成度の高い数々の小説を書き上げました。平易ながら簡にして要を得た品格のある志賀の文章は英訳し辛い性質があるため、国際的には低評価されているきらいがあります。文章はすべての無駄が取り除かれ、硬質ですが、それでいて、中学生でも理解できるほどの近づきやすさを持ち、きちんと整理された日本間のような居心地の良さがあります。一見なにげなく置かれたように見える一語がきれいに打たれた釘のように動きません。この「小僧の神様」という短編では、「しかるべき」という強い一語が初めの方のなんでもないようなところに置かれ、それで、この短編に気持ちのよい緊張感と気品を持たせることに成功しています。言語感覚においては、他の作家と比べてみても群を抜いていると言っていいでしょう。生涯、潔癖の精神を貫いた名文家です。