「ポケットに名言を」寺山修司 角川文庫
一時代前に、一世を風靡した小さな名言集です。撰者のかんがえとしては、こうした簡便な本から、引用された文章を読んで、当の本を読んだ気になるのは、どうかとは思いますが。この本から、さらに孫引きされた言葉が、一人歩きしている感がありますので、一言しておきたいと思います。この本には、寺山の意訳がかなりあります。「文化の仕掛人」として、マンガの登場人物の葬式を真面目に執り行ったという経歴が示す通り、日本文化というものに対して、ある種の屈折した思いを抱かずには、いられなかった人でした。名言のアンソロジーというアイディアには見るべきものがありますが、その言葉まで、まるごと鵜呑みにしてしまうのは危険というものでしょう。一昔前の日本人の屈折した感情を理解し、その引用された本もそれなりに読んだ上でなら、有益な書物と言えるでしょう。その意味では、時代というものを強く感じさせる書物です。
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