Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 日本の自然 2 <流れに沿うこと>

日本の自然は、そのほとんどが、人間の手が加えられて成り立ったものである。手を加えると言っても、欧米などとは、その手の加えられ方がまるで違う。


日本は、物事の流れというものを重視し、その流れに沿って、自然に手を加える。つまり、時代や社会というものと歩調を合わせて、自然と付き合うように手を加えようとするが、欧米は、ドラスチックに、自然そのものを、自分の都合の良いように、加工すると言って良いだろうか。


一時期、日本では、公害などの環境汚染は甚だしかったが、今、各段に改善されつつあるというのも、日本人の考え方の根本にある、物事の流れに沿うという、悪く言えば、ご都合主義的な、よく言えば、それこそ自然主義的な思考があってのことであろうと思っている。


細かく言えば、欧米でも、自然に関する考え方は、大きく二派に別れるようである。ニュートンに代表されるような自然の根本原理を訊ねてから、これを踏み台にして、自然を加工しようするという流れと、ゲーテの色彩論に見られるように、自然のあるがままの姿を尊び、そこから、人間の生き方なり、社会なりをただそうとする流れと。ただ、現在では、圧倒的にニュートン流の自然観が主流になっていることは、間違いないようである。


断って置きたいが、どの自然観が優れているという訳ではないことであるが、美しい自然を保存してきたということについては、日本と欧米では、同日の談ではないだろうと思っている。営々とした歴史上の自然に対する態度は、双方とも、一時期の急激な変化はあったにしても、根本から変わるものではない。一時代前の日本の公害は、ハッキリと行き過ぎであったが、日本人は直ちに、我に返ったと言って良かろうと思う。


日本の自然は美しい。これは、遠い昔の先人から、営々として積み重ねられてきた、人々の営みと自然が応和して出来上がってきた自然であって、決して、大自然というものではない。けれども、そこにこそ、自然と人間との本来の姿というべきものがあるように思えてならないのである。