Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 「悪の華」ボードレールのこと <告白>

有名な本で、この本に影響を受けたという人も、多いと承知しているが、わたしは、この「悪の華」には、まるで不感症だった。


岩波文庫版で、読むには読んだのだが、何が良いのかさっぱり分からなかった。近代の毒を凝縮した書物だとは、聞き知ってはいるのだが、はて、それでというような感じで、如何にわたしがぼんくらな人間かの、証拠なようで、気恥ずかしい限りであるが、ここは、正直に告白しておこうと思う。


「悪の華」と「パリの憂愁」はどちらも、わたしには、何も解せなかった。


その代わり、ボードレールの寸言には、応えたものだった。「批評家が詩人になるということは驚くべき事かも知れないが、詩人であって批評家でないというのは、有り得ないことである。わたしは、詩人を最上の批評家と見做す。」と、確かこういうことばであったが、このことばには、強い衝撃を受けたことも、同時に告白して置いた方が良いように思える。


わたしは、小林秀雄という人は、このボードレールのいう驚くべく人だと思っている。小林秀雄という人は批評家である前に、何よりも、詩人であったと言った方が良い人だというのが、わたしのかんがえである。


わたしは、自分が読んで、感心したり感動したりした本でなければ、「おすすめ本」には、入れたくない。だから、「悪の華」と「パリの憂愁」は、おすすめ本には入れない。