Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 小林秀雄の功罪というもの

わたしは、ブログに「尊敬する芸術家」として、小林秀雄を挙げているが、これは嘘偽りのないことで、ほとんど毎日、小林秀雄のことをかんがえない日は、ないくらいなのである。


だが、わたしは小林秀雄の本は、「おすすめ本」の中には2つしか入れていない。それも、主著ではない。これには訳がある。


前の記事にも、書いたのだが、高校の同級生で、「罪と罰」を読んでもいないのに、小林の論考を読んで、その当の「罪と罰」も読んだ気になっていた生徒のことを書いたが、これはじつは、無理もない話なのである。


小林の論考は、それほど迫真力と魅力があるもので、ほとんど論自体が、繰り返し読める詩と化している感さえある。小林秀雄の愛読者なら、肯いてくれる言い方だと思う。


例えば、佐藤春夫という作家がいるが、わたしはこの人の本を、ほとんど読んでいないのだが、若い頃の小林の短い批評文を読んで、その本質のところは理解している気になってしまっている。いや、高校の時の同級生を笑えないのである。


わたしは、私の「おすすめ本」を読む人に、そうなっては欲しくはない。だから、「おすすめ本」の中には、僅かしか入れていない。


これから、徐々に小林の本もお薦めするかも知れないが、かなり、慎重におすすめすることになると思う。


そうした訳です。どうぞ悪しからず、ご了承ください。