Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ 「古事記物語」福永武彦 <感想>

岩波少年文庫に入っている本であるが、少年文庫に入っているのが惜しいくらい内容が充実した本である。


わたしは、福永武彦という人は小説家であることだけは知っているが、他の本は読んだことがない。だからこれは、推測になってしまうのだが、おそらくこの著者の中で、最も良い本の一つだろうと勝手にかんがえている。


あるとき、70歳ほどの読書好きの人に、この本を薦めたことがあるが、とても読み応えのある良い本だとお礼を言われたことがある。


もし、この書のカタカナ表記してある神名を、すべて漢字にしてルビを振ったなら、そのまま、大人の読み物として、通用する書物だと思う。


日本人は、原文を尊ぶ風潮がある。それも、もっともな事で、わたし自身、原文無用論者では、さらさらないのだが、日本の古文の訳というのは、ずいぶん閑却されてきたことで、つい最近になって、古文の現代語訳の仕事が、始まったばかりと言っていいくらいなものである。


そのためか、中には、どうであろうかという現代語訳も多い中で、本居宣長の「古事記伝」の仕事があったせいか、この「古事記物語」の現代語編訳は、とても良質なものと言っていい。


序でながら、わたしの「おすすめ本」の中にも入れてあるが、岩波文庫で出ている「古事記」も、現代語訳ではないが、とてもしっかりした良い本である。


先人が培ってきた仕事というものは、そういう意味で、じつに有難いものだと思う。