「玉くしげ・秘本玉くしげ」 本居宣長
本居宣長の政治論文です。「玉くしげ」のような後世に残るほどの政治論文をものしたのは、当時の学者の中でも、宣長ぐらいでしょう。ここで、宣長は誰憚ることなく、自分の所信を開陳します。殊に、百姓一揆についての情理を尽くした推論は、まことに説得力のあるもので、「今の世に取り沙汰あることは、少しも、下の責に拠るものにあらずして、すべて、上の責に拠るものなり。」宣長が、このように、自由に発言できたことについては、宣長は医者を生業とし、経済的にまったく自立し、思想的にも独立独歩の人であったことにも拠ります。現代の自由人の中で、宣長のような味わいのある政治論文を書けている人が、果たしているでしょうか。独立独歩の自由人であるという意味合いが、現代、まったく取り違われてしまっていると言っていいと思います。
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