Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

エッセイ アラン「幸福論」考 & おすすめ本 改版

アランは若い頃に、神経症を病んだ経験がある。その病いの最中に自ら軍役を志願し、自力で神経症を克服したという経歴の持ち主である。


「幸福論」の第一の特徴と言えるのは、非凡な文章力で、読者を、誰にでも覚えがあるような神経症的な症状に導いていって、そこから、どのように抜け出すのが最良なのかを、克明に描いて見せた点であろう。


またこの本には、忘れがたい文章が随所にある。ラグビーについての記述もそうで、結果として待っているのは、あざと汗と疲労に過ぎないと、哲学的な考察をし、けれども、ラグビーのことを考えるだけで、もう体は動き出し、足は軽快に地面を踏もうとすると、モラリストの言葉になる。


それから、従軍した者の経験として、戦争というのは弾に当たるのを除けば、健康に良いものである。戦争は重労働だからである、という興味深い一文も見える。また、習慣だからという理由で、変えられないというのは、単なる俗論で、変えようする意思とその時が来れば、自ずと変えられるものである。との一文もある。


数え上げていけば、キリがないが、これほど叡智に満ちた言葉が、数多くちりばめられた本は、そう多くあるものではない。


読者は、最初の数ページを読んだだけでも、もう何事かを得てしまう。嘘だと思ったら、騙されたと思って、読んでご覧なさい。