Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「道徳と宗教の二源泉」ベルクソン 岩波文庫

ベルクソンの遺書と言える著作です。聖書に由来する神とギリシア哲学における神々とが混交してしまった西洋哲学の弱点とも言える神観念をきれいに解きほぐして行きます。ベルクソンは決して難問を一挙に解決することを望みません。着実な一歩を進め、後は後世の哲学に託そうとします。この著作の最後で「人類はまだ自分たちの将来は、自分たち次第だということを知らないでいる」という予見に満ちた言葉を残しています。ベルクソンはこの書を書き終えた後、ほぼ十年の沈黙を守り、1941年、世界大戦のさなかにこの世を去りました。享年81才でした。