Toshiのエッセイと詩とおすすめ本と絵などのブログ by車戸都志春

文芸を中心に、エッセイやおすすめ本の紹介文、人物画、写真、現代詩、俳句、短歌などを載せたブログ。by:車戸都志正

「玉勝間」本居宣長 岩波文庫

宣長が「古事記伝」を執筆する際、研究余録として書かれた随筆集です。内容は国学を中心として、諸事万般に渡るもので、宣長の興味教養や思考の幅がじつに広く、また深いものであったことを窺わせます。書中、尚古主義とは正反対の思考や弁証法的な論法をきれいに叙した文章などが見えます。また、孔子という人物はけっして傷付けずに、論語に文句を言っている箇所などは宣長の人物をあざやかに浮かび上がらせる秀抜な章です。徒然草の兼好に文句を言っている箇所も必見に値します。宣長は、日本史上特筆すべき思想的な人物でした。