現代詩 蝶
ハガキの上に蝶がとまっている
世界中に張りめぐらされた
無漏の郵便の網の目のどこに
ぼくはこのハガキを乗せようか
十色の絵の具を流した川の上を流れて行けばいい
粉砕された光の粒を散りばめた湖の上を渡って行けばいい
霧を忘れた砂漠のラクダには
挨拶をして行っておくれ
あらゆる雲の形を覚えてしまった象にはよろしく言付けておくれ
小川のせせらぎに感動しているカワセミには黙って
井戸の底で呟いている大山椒魚はそっとしておいて
緑色の気のいい未開人には捕まらないで
蝦蟇があくびをした泥田の空気は吸わないで
車に轢かれてペシャンコになったウシガエルには、よろしく哀悼の意を表してくれ給え
塀の上のさかりのついた猫には冷たい口づけを忘れずに
絶世の美女にはウインクを送り
情事の終わった色男には鋭利な一瞥を
あの山の向こうのガラスの国には
ぼくの等身大作りの朽ちた土偶を
そして
ああ蝶よ
どうかぼくの恋人を連れて来ておくれ
どんなインクでも汚れない
真っ白なハガキになって
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